第15話 猫パンチとスライム達
レオが年上と発覚したとはいえ、その可愛らしさは変わらない。
これからも全力で愛でていこうとヒナノは決心する。
とりあえず目の前の岩塩を採ってしまおう。
ヒナノはナイフを逆手に持って岩塩に突き立てた。
固さは鉄よりはマシであるが、先端が少し入るぐらいで削り取るのには時間がかかりそうである。
ということでヒナノは【変形】と【移動】の能力で少しずつ塊から塩を採っていくことにした。
硬いはずの岩塩が柔らかくなり、手前に移動し終えるとまた固まる、そんな感じである。
鉄の時は相当時間がかかったが、それよりは早そう。
二つの能力はまだレベルが低いがナイフでやるよりはマシなのでヒナノは続けた。
だがそれでもすぐにとはいかず、見かねたレオが言う。
『ヒナノ、僕がやってみようか?』
「えっ、レオ君が? できるの?」
『ヒナノよりは早いと思うよ』
体の小さいレオが、この大きな塊から岩塩を採るのは厳しいのではないだろうかとヒナノは思ってしまう。
下手をすればヒナノより遅いかもしれない。
でもレオが自信満々に言うのでヒナノは任せることにした。
「じゃあ、お願いします」
『はーい!』
軽い感じで可愛く引き受ける子猫なレオ、まあヒナノより随分と年上だが、レオを見ていると年齢なんて小さなことだと許せてしまうから不思議である。
見た目は子猫そのものだし性格もいいので仕方がない。
岩塩の前からヒナノを下げて前に出るレオ、少ししゃがんだと思った瞬間、ぴょんと飛び上がり手を振りおろす。
『にゃん!』
(いやいや、全然届いてないし!? 可愛いけど!!)
ガキンッ!!
ヒナノが心の中で突っ込んだのも束の間、岩塩の塊に何かがぶつかり、4本の亀裂が大きく入った。
そこから、がらがらがらと岩塩は崩れ落ちる。
「え、ええ~!? レオ君、レオ君! どうなってるの? 凄いよ!?」
触れてもいないのに岩塩は粉々になった。
大猪を吹き飛ばしたり、岩塩を簡単に破壊したりレオの能力の高さにヒナノは驚いてしまう。
『ふふん! それほどでも』
誉められたレオは、いつになく誇らしげであった。
ご褒美に小さい岩塩に魔力を込めた物を食べさせようと、ヒナノが差し出したら……。
『うん、さすがにそれは無理!』
「そう、やっぱり?」
レオは鉱石好きとはいえ、どうやら塩の固まりはヒナノの魔力入りでも受け付けないらしく駄目なようである、はっきりと断られてしまった。
まあ、しょっぱいから仕方がないよね……。
代わりにアイテムボックス内のダイヤに魔力を込めた物をあげた。
『くううううう!』
お気に入りなので、レオは美味しそうに食べる。
もはや完全に餌付けである。だがレオも喜んでいるのでこれでいいのだろう。
バラバラになった岩塩は大小様々。
スライム魔石に入る大きさの物を選んでヒナノは岩塩を入れていく。
胡椒同様、一年は持つであろう量を採ることに成功する。
食料事情は少し改善されたのであった。
「そういえばレオ君、スライムって何種類ぐらいいるの?」
『色々な種類がいるからね。僕が知っている限り5種類以上はいると思うよ』
突然ヒナノがレオに確認したのには理由があった。
実は魔石の効果はスライムの種類によって違うのではないかとヒナノは思っている。
種類が違えば収納という能力にも変化があるかもしれないと考えた。
今のスライム魔石の収納は別の空間にスペースがあって、そこに保管しているだけであり、倉庫のようなものである。
でも神様がこちらに来るときに持たせてくれたアイテムボックスは違う。
取り出しても数量は変わらないし、中に物を入れれば新品になってまた出てきた。
時間停止とか無限(数量固定?)みたいな機能が備わっている。
完全には再現はできなくても、時間停止機能みたいな効果があるものを付けられないだろうかと、ヒナノは考えた。
レオによればスライムは5種類以上はいるので、それぞれ違いがあればいいのだが。
『胡椒を採りに行ってきた時は三種類のスライムを倒したよ』
魔物狩りはレオの趣味なのか出掛けると必ずやっているようである。
レオが取ってきた魔石を確認すると種類が違ったようであるが、収納に関して違いはなかった。
三種類とも同じように倉庫タイプであり他に特徴はない、容量も同じだった。
収納に変化が出るとすれば、ヒナノと出会ってから今までにレオが狩ったことのないスライムということになる。
「じゃあレオ君、今度見たことのないスライムがいたら獲ってきてもらっていい?」
変な注文であるが、快適な生活のためにヒナノはレオに、お願いしてみる。
『分かった。今度行った時に探してみるよ』
「うん、お願いね」
時間停止機能が可能であれば快適ライフに一歩近づく。
収納の時間停止は異世界では定番であり、もっとも欲しい機能の一つ、あこがれ装備である。
魔物や獣の肉や食料も腐るのを心配しなくていい。
それを自分で作り出せるのなら、これほど楽しいことはない。
まあ、その前に作らなければならない物、やらなければならないこともある。
ナイフやフォーク、皿などの食器類。
フライパンは作ったので鍋などの調理器具。
10日間でアイテムボックス内の水は消えてしまうので、水の確保は必須。
パンやナイフもそうだろう。
火を起こすのも毎回レオにお願いするのもどうかと思うので、自分でなんとかしたい。
頼めば嫌がらずにやってはくれそうであるが、レオがいない時だってあるはず。
自分でできるに越したことはない、ヒナノは考えを巡らせる。
「じゃあ、レオ君食事の用意をするね」
『ん、よろしく~』
岩塩と胡椒、フライパンのような物でヒナノは肉を焼くことにした。
「あっ、肉がないね」
『胡椒を取りに行ったついでに取ってきたよ』
「さすがレオ君!」
とっても気が利く、できる子である。
レオはスライム魔石から子豚のような魔物を取り出した。
肉が残るということは食べられるということだろう、それがこの世界の決まりである。
収納できる魔石があって良かったが、やはり時間停止は欲しい。
この子豚も見た目は分からないが痛みが進んでいるはず。
時間停止させておけば長期間保存が可能であり便利なのは間違いない。
「ありがとう。料理が口に合うといいけれど」
ヒナノは調理に取りかかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます