第13話 鉄鉱石発見
石の変形にも慣れてきたので、食器や武器様々な物に流用できて生活の幅が広がる鉄も扱ってみたいとヒナノは思っている。
鉄を変形させたり合成させたりすることができれば、錬金術師や錬成師みたいで憧れる。
自信を持って鉱物使いですと名乗ってもいいかもしれない。
今はまだ能力的に低いので堂々と誰かに言うのはヒナノとしても躊躇われる。
まあ、今のところ人に出会える気配はしないのだが……。
ヒナノは【知覚】で鉄鉱石をイメージして探してみる。
ぽつぽつと地面が光っている部分が見える、これが鉄鉱石なのだろう。
光っている場所をナイフで掘っても何も無い事もあるので、もっと深い場所に鉄鉱石があるのだろう。
ナイフは土が付いても刃こぼれしてもアイテムボックスに入れて取り出せば新品になって出て来るので、こんな荒い使い方をしてしまう。
期間限定ではあるが、これも凄い能力でありヒナノとしても再現したいところである。
【知覚】の能力は場所は分かるが、上下方向の距離が分かり辛い。
成長すれば上下方向の距離も分かるようになるはずであり、今は能力的にまだ低いので仕方がないが場所が分かるだけでも儲けもの、とヒナノは考えるようにしている。
その方が前向きであり楽しい気分になれる。
掘る道具がナイフしかないのも問題であり、スコップのような専用の物が欲しい。
その為にも鉄鉱石を探し出して【変形】の練習をしなくてはならないだろう。
鉄鉱石と指定しないで【知覚】を使ってみると、色の違う光が多数地面に浮かび上がった。
これは多分、種類の違う鉱物があることを示しているはずである。
これ程沢山の鉱物があるという事は、ここ周辺一体は鉱山なのだろうか。
それとも鉱物は普通に落ちているものなのだろうか?
ヒナノにはそこら辺の知識がないので判断できない。
まあ、どちらにしてもヒナノにとっては自分の能力を活かせる物が身近に転がっているのであれば、ありがたいことである。
利用しない手はない。
鉄鉱石はあるにはあったが、大きさがかなりあって大半が地面に埋まっている。
ナイフで掘り出してみたらとも思ったが、まあ無理だろうとすぐに諦めた。
(ここはやっぱり能力の出番だよね)
地面から出ている部分の表層にある鉄鉱石を削り取っていく。
【変形】と【移動】により少しずつ切り離して横に塊を作っていった。
時間はかかったが意外に上手くできたので【変形】は上達しているのではないだろうか。
後でステータスを確認してみよう。
塊から切り離した鉄鉱石はかなりの大きさになり表面は黒くゴツゴツしている
そこから鉄の成分だけを抜き取っていく。
スピードはまだ遅いが比較的短時間でヒナノはこの工程を行っている、通常であれば高炉などで鉄鉱石を高温で熱してから取り出す、時間の掛かる作業である。
しかし【鉱物使いSS】の能力により、その工程を省き鉄の成分だけを抽出することが可能となっている。
その凄さにヒナノは気がついていない。
本人的には便利な能力ね、ぐらいにしか思っていないのだろう。
始めのうちは使い勝手が悪かったが、成長してくれば能力はとても使いやすい。
今後さらなる成長を考えれば、良い能力を貰えたのかもしれないとヒナノは神に感謝する。
鉄鉱石から取り出した鉄は拳大の大きさになった。
ここでヒナノは気がつく。
(あれ? もしかして始めから地面に埋まっている鉄鉱石から鉄だけを抽出すれば良かったのでは?)
実際にはヒナノの能力なら可能であり今までの工程は無駄な作業だったといえば、その通りであった。
だが、【変形】や【移動】等の練習にはなっており、そのお陰で能力は成長している。
無駄と考えるかは本人次第だろう。
取り出した鉄をまずは整形しなくてはならない。
球状の塊を手で潰して薄く伸ばし板状にする。
中央に凹みをつけてフライパンの形に成形していくわけだが、まだレベルが低いからなのかどうもイメージしたものより不格好な感じになってしまう。
(やり方が悪い? 球状から凹ませた方がいいかな?)
作業に集中していたら、あっという間に時間が経ってしまった。
その間近くで大人しく寝そべってヒナノの作業を見ているレオが可愛くて、少しちぎった鉄に魔力を少し込めてレオに食べさせてみた。
ヒナノはレオには甘々なのである。
レオは口の中に入った鉄を嬉しそうに食べる。
鉄であってもガリガリと噛み砕くのだから相変わらずレオの歯は凄い。
「レオくん味はどう?」
『うんうん、噛みごたえがあって美味しいね。前に食べたものと違った味わいで好きだよ!』
魔力が良い味付けになるのか、やはり鉱物に魔力を込めれば何でも美味しいらしい。
まぁ、そこら辺に材料が落ちているので、今後レオの食料には困らないだろう。
ヒナノの食料はレオが取ってきてくれるので、お互いに助け合いと言うことで良いのかもしれない。
ヒナノとしては生活の質の向上を目指せば良いわけであり、狩りやできない事はレオにやってもらうと言うことでお互い利害関係が一致している。仲良くやっていこうと思う。
そして一番重要なのがレオの可愛さでありヒナノを癒す存在としての意味合いがとても大きい。
見ているだけで幸せな気持ちになるのでそれだけで良い気もしてくるが、更に強く優秀ともなれば言う事は無い。
神様がサービスしてくれたなかで最高のプレゼントではないだろうか。
只、今食べさせた魔力入り鉄のレオの反応はイマイチだった。
美味しいとは言っていたが、ヒナノが欲しい反応はこんなものではない。
(考えられるのは只の鉄だったことか、魔力量が足りなかったとかかな?)
鉄を千切って軽く魔力を帯びさせただけなので可能性はある。
宝石のような物の方が鉄より好みとか、そんなこともあるかもしれない。
まさか鉄の味の良し悪しなんて考えるとはヒナノは思いもしなかった。
この世界は不思議である。
とりあえずヒナノは鉄に先程より真剣に多めに魔力を込めてみた。
「はい。どうぞ」
『またくれるんだ、ありがとう!』
レオは口に鉄を含むと目を見開く。
『おっ、おおおおお!?』
どうやら正解のようだ、この反応が欲しかった。
「レオ君にあげるものは魔力たっぷり味濃いめがいいってことね」
ヒナノは学んだのであった。
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