第12話 収納実用化

 結論から言えば、レオに取り付ける首輪は完成した。

 ヒナノは、あーでもないこーでもないと散々作り直しはしたが、何とかレオの狩りの邪魔にならない物ができたようである、多分。


「残りはスライム魔石を取り付ける部分ね!」


 魔石が落ちるのが心配で狩りに集中できなければ意味がない。

 首輪に魔石を埋め込み落ちないようにする。

 魔石と石の首輪なので【合成】で接着可能であるが、更に魔石の周りを囲って接着を強化したい。

 

 首輪を何回も作り直していたので若干、ヒナノも石の扱いに慣れてきたようである。

 石を伸ばしたり曲げたりする早さが早くなり、繊細さも出てきた。

 これなら能力上がって上手くなれば色々と作れそうであり、ヒナノは楽しくなってくる。


 更に収納容量を増やす為に神様のダイヤに魔力を込めた物を複数取り付ける。

 随分と高級な首輪になってしまった。

 

「じゃあ、レオ君に首輪を着けるね」

『うん』


 まだ、切れ込みがある状態なので広げてレオの首に巻く。

 石に柔軟性を持たせられるのも能力のお陰だろう。

 動きを阻害しないように調整して曲げる、最後に端と端を【合成】により接着する。


「うん、できた!? どうかな、邪魔じゃない?」


 レオは首輪の具合を確かめるように、首を振ったり体を動かす。

 その光景が何だか可愛らしくヒナノは、きゅんきゅんしてしまう。

 これだけでも首輪を作った甲斐があったとヒナノは本気で思っている。

 

『うん、大丈夫そうだね。問題なく動けるよ。それでこれってどうやって使うの?』

「あっ、うん」


 ヒナノは可愛い仕草のレオに見とれていて本来の目的を忘れていた。

 レオに合ってからそんなことばかりである、早く収納の説明をしなければ。

 

「入れたいものを意識して入れと念じてみて。出したい時は逆に出ろと念じてね」


 ヒナノ自身は【鉱物使い】なので、魔石を収納として使えるが他人(他魔物?)が使って同じ効果があるのかは確認していなかった。

 首輪を作る前に確認すべきだったのではとも思ったが、ヒナノとしては作るのが楽しかったので、もしレオが魔石を使えなくてもいいだろうぐらいの気持ちなのである。

 

 レオは地面に転がっている石に、ぬいぐるみのような小さな手をそっと置く。

 肉球が、ぶにっと音がしそうであり、ヒナノはレオの可愛らしい仕草に釘付けである。

 【鉱物使いSS】の能力でレオを撮影して記憶できるものを作れないだろうか、永久保存したいとヒナノは本気で考えた。


 ポンっと石が消えたので、どうやら成功したようである。


「『おお~!』」


 レオは収納できるスライム魔石が気に入ったようで、石の出し入れを繰り返す。

 只、巨大な岩など大き過ぎる物に魔石は反応しない。

 対象外の物や、容量を超えてしまうと機能しなくなるのだろう。

 容量と首輪の材質等、まだまだ改良が必要である。


『凄い! 便利だね。ありがとうヒナノ!?』

「喜んでもらえて良かった!」


 なるべく石を細目にして首輪を作ったが、皮とかに比べたらどうしても重量はある。

 レオは全然問題ないと言っているが、軽量化も今後の課題だろうとヒナノは頭の中にメモした。


 服のポケットに入れておくのも無くしそうなので、スライム魔石を取り付ける為にヒナノは指輪を作る事にした。

 ヒナノはネックレスタイプにするか指輪タイプにするかで悩んだ。

 指に付けるのに魔石が大きいと邪魔になるが、小さめの魔石があったので今回は指輪タイプを選択したようである。

 今のところ城に行く以外に目的もないから時間だけはある、今後色々な物を作っていけばいい。


 指輪はレオの首輪ほど大きくないので意外に簡単にできた。

 ヒナノも成長しているということだろう。

 レオのようにダイヤを複数付けることができるスペースが無かったので、容量はそれほどでもない。

 でも後から強化できるはずなので今はこれで良しとした。 


 魔石は小さいとはいえそれなりの大きさであり、付ける場所は指の中では太い指ということで左手の中指にした。

 親指に付けていたら色々な作業をするのに何だか邪魔そうなので除外。

 右手は利き手でありよく使うのでフリーにしたかったから左の指を選択したようである。


「あっ、腕輪にしても良かったかも」


 腕輪であれば作業するに、それほど邪魔にはならないかもしれない。

 しかもダイヤを多数取り付けて容量を増やすこともできた。

 今後の課題にしようとヒナノは気持ちを切り替える。


 石の変形が上手くなってきたので、色々と作りたい物が出てきた。


(鉄鉱石とかって鉱物よね?)


 食料事情を改善したいので鉄を変形できるならフライパンや食器など作りたい。

 収納ができるようになったので、持ち運びもできる。

 前世では仕事が忙しかったということもあり、食事は只の栄養補給ぐらいにしか考えていなかったので、せっかくのんびりと生活できるのなら充実した食生活をしたい。

 

「レオ君は人間の食事は大丈夫なの?」

『人間がいるのは知っているけれど、あまり係わってこなかったんだよね。だから人間の食事はたまにしか食べた事ないよ』

「普段は魔物とか獣の肉を食べていたの?」

『そうだね。果樹とか、きのこも食べていたけど、主食は肉とか魚だね』

「そっか。今度道具が出来たら作ってみるから味見してみてね」

『うん。分かった』


 レオが食べてくれると思うと俄然やる気が出てきた。

 それには先ずは道具作りをしなくてはならない。

 ヒナノは鉄鉱石を探す事にした。

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