第4話 レベルと能力

 水を飲み陽菜乃が何気なくアイテムボックスを確認すると、水10個と表示されていた。


「えっ!? 10個?」


 陽菜乃が一つ取り出して飲んでいるにもかかわらず表示は10個、減っていない。

 とりあえず他の物も一つずつ取り出してみる、パン、ナイフそしてダイヤ。

 すると同じようにアイテムボックス内の数は減らず10個と表示されたままである。

 壊れているのかとも思い飲みかけの水を戻してみるも変わらず表示は10個。


(うーん、減らないし増えないってこと?)


 陽菜乃は試しに10個全ての水を取り出してみるも、表示は10個のまま。

 11個目をだしても10個は変わらない。


 だったら無限とか表示すればいいのではと思うが、減らないという機能は素晴らしいし文句はないので、まあそういうものなのだろうと陽菜乃は納得する事にした。

 

(これが与えられた能力なのだろうか?)


 これも凄い能力ではある。

 中身の数が減らない機能など、前世だったら大変な事になる。


 でも10日間限定だから違うのだろう。


 神様は能力を与えると言っていたが、限定の能力とは言っていなかったので、これはサービスの一環と考えるのが妥当なはず。


 ということで陽菜乃は能力を確認してみる事にした。


 これもまた頭の中に浮かび表示される。


 【鉱物使いSS】


「よかった。ちゃんと能力があった!」


(これが私の能力。鉱物使いってことは鉱物に関する能力ってことよね。後ろにSSが付いているけれどなんだろう……)


 やっぱりアイテムボックスとは別に能力があったようであり陽菜乃は安堵する。

 期間限定の能力だと、この先厳しいだろうと思っていた。


 能力を確認すると鉱物に関する特殊能力という説明があり、詳しい事は自分で解明してくださいとの事。


「やっぱりそこは教えてくれないんだ!」


 親切なんだか親切じゃないんだか、能力については、かたくなに神様は教えないスタンスのようである。

 とりあえず10日間は食べる物には困らないので、その間に解明していくしかない。

 パンだけなのは問題だが、ないよりはいい、というかあるだけありがたいです、陽菜乃は神に感謝する。

 文句なんて言ったらバチが当たってしまう。


【鉱物使いSS】

 レベル F

 鑑定 F

 知覚 F

 移動 F

 変形 F

 変質 F

 合成 F

 分解 F

 付与 F

 光沢 F


(うーん、綺麗にFで揃っているわね)


 レベルから【光沢】まで全てが統一されておりオールF、これはこれで気持ちがいい。

 でもFって一番下のランクだよね?

 そこら辺の説明は表示されない不親切設計。

 まあ、自力で解明しろって言うのが神様の方針らしいので仕方がない。


「うん! 能力を使ってみよう!」


 考えても分からないので使ってみるしかない、そんな結論に至る。

 鉱物に関する能力なので地面にある石を適当に拾って陽菜乃は能力を発動。

 

【花崗岩】


 名前が表示された。

 通常、鑑定と言われるものは、その名の通り調べたい物の詳細が分かるはず。

 しかし表示は名前だけでありそれ以外の説明はない。


 拾った石は黒や白、ピンクなどの粒が集まった物であった。

 そこに関しても一切情報はない。

 もう少し詳細が変わればいいのだが【鑑定】レベルがFだから仕方がないのだろう。


 その後も色々な石を鑑定してみる陽菜乃だが、ある事に気がつく。


(これ鉱物限定の能力って事なのね)


 木や草、生き物には反応しない、石や岩などの鉱物にしか発動しない。

 まあ、それだけで凄い事ではあるが、異世界の【鑑定】と言ったら何でも分かってしまう万能なものというイメージがあったので、鉱物限定なのは少し意外に感じてしまう。


 その他に関しても同様であった。

 鑑定、知覚、移動、変形、変質、合成、分解、付与、光沢。

 全て鉱物に対して有効であり、他の物には発動しないようである。


 限定的な力であるが、これが神が陽菜乃の為に選択した力であり、この能力があればこの世界で生きていけると判断したということだろう。

 まあ、人間の生死など神にとっては取るに足りないものかもしれないので、なんとも言えないが、そういう事だと思った方が前向きだろうと陽菜乃は考える。


 一つ一つ確認してやれることを探していこう。


【知覚】


 知覚ってい言うぐらいだから鉱物を感じ取れる能力だと思う。


「んんんっ!?」


 使用してみると鉱物がある場所なのだろうか、様々な色の光が地面に浮かび見えてくる。

 それらは鉱物を示し、色の違いは種類の違いなのだろう。

 陽菜乃は光に近づき手をかざす。


「【鑑定】!」


 石の名前が頭に浮かぶので陽菜乃の予想した通り【知覚】の能力は鉱物の場所が分かるようである。

 只、少し土を払ってみても【鑑定】した物は見えない、つまり地中にあるってことなのだろう。

 深さは分からないが【知覚】で地表に光が見えたので掘っていけばあるはず。


 次々に【鑑定】していくと種類が違う鉱石がゴロゴロしている、鉱脈なのだろうか、普通はこういうものなのだろうか陽菜乃には判断できない。

 

ピロロン!


(えっ? なに?)


 頭の中で音が鳴った。何事だろうと思い陽菜乃はステータスを確認してみる。


【鉱物使いSS】

 レベル F

 鑑定 E

 知覚 F

 移動 F

 変形 F

 変質 F

 合成 F

 分解 F

 付与 F

 光沢 F


(【鑑定】がFからEに変わっている!?)


 【鑑定】を色々な物に使っていたから能力レベルが上がったようである。

 つまり使えば使うほど、この能力は成長するということだろう。

 これは使い続けるしかないわねと、成長できる事に陽菜乃は嬉しくなってきた。

 こうして表示されれば分かりやすいし、前に進んでいる感じがして楽しい。


 その時、陽菜乃は背後で気配を感じて、その方向を確認すると……。

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