第2話 神と転生

目が覚めると、全く知らない場所にいた、視界に映る物はすべて白い。


全く見覚えのない場所で突然目覚め戸惑うが、そんなことより~




ぱっ!




っと僕の背中に手を当てる




「はー、良かった~」




意識がなくなる前、自分のお客さんに刺されたことを思い出しすぐに確認した。


先ほどまで、生温かい血がドバドバと流れていたが、もう流れてはいなかった。


ということは、助かったー




「って、ないよ。」




突然、目の前に知らない老人が現れる。


全身を白い服で覆い、老人とは思えない肉体を持っていた。




「残念ながら、君は死んだのだよ。少し戸惑っていると思うが黙って私の話を聞きたまえ」




そう告げられると喋ろうとするが、口が開かなくなっている。きっとパニックになって話にならないと思って何かしたに違いない。


そして、老人は言葉を続ける。




「君は、必然的に死んだのだよ。君は家族のためとはいえ、他の人の人生をぶち壊した。当然の報いだ。本来なら死んだ者は、魂となり新しい肉体に入り新しい命となる。だが、君は地獄行きだろうね。地獄行きたいか?」




と老人は、私に尋ねる。


ぼくは、もちろん地獄なんて行きたくもなくしゃべれなくても、頭を横に振り嫌だということを伝える。




「でしょうね、地獄は説明しなくてもどんな場所か想像つくらしいね。」




老人は少し笑みを浮かべながら、僕を見つめる。




「そんな、君に提案がある。まぁ、君は断れないだろうがね、君にはね私のもう一つの世界に行って欲しいんだよ。質問することを許可しよう」




すると、


急に開かなくなった口が開くようになった。僕は思った。この人は神なんだと。そしてこの提案を絶対に断れないと。確実に自分は甦れないはずだし甦ったりしたらしたで、また刺されるだろう。


突然なにも知らない世界に放り出されるよりはマシだ。


ここは丁寧に質問していくしかない。




「ありがとうございます。では、いくつか質問させていただきます。一つ目、私はどんな世界に転生するんでしょうか?二つ目わたしは、何歳からスタートですか?生まれ変わるということは、赤ん坊からだと記憶が年齢的に曖昧になるはずです。そして、そちらの世界の行く条件を提案することができますか?」




僕も子供のころからアニメや小説が好きだ。特に異世界転移系はね。でもいざ自分が転生すると思うとチートがもらえる気がしない。これは小説と違いそんな甘い感じがしない。目の前にいる神の雰囲気、そして何より僕は、手違いで死んだわけじゃない、必然だ。


僕は、人をだまし人を陥れ、這い上がってきた。


そんな、僕に小説にいる主人公みたいに無双させてもらえるはずがない。


ならば、僕は最悪の状態で転生するより、少しでも最悪から遠ざかりたい。




「君が転生する世界はね、平和とは少し程遠い世界。君の世界と違いいろんな種族がいて魔法がある、そしてお互いを軽蔑しあい争い続けてる世界、だが中には、心優しきものもいる、だがその世界には幸せに生きることができない。だけど私は彼らが笑って暮らせる世界がみたい、私達は神であっても自分の作り出した世界に干渉できない。だから、君みたいな者を送るのだ、君みたいに生まれ変わることのできない魂を使い、魂をその世界に送るのだそれならば問題はない。」




なるほど、ある程度どんな世界かは大体はわかった。小説の定番のようで助かった。




「君の年齢と肉体そのままで行ってもらう。そして、条件はもちろん聞こう私は鬼ではない、君を突然放り出したりしないさ。今回、私が担当で良かったな。ハハハッ!」




神は、僕に笑いかける。


本当によかったわ。さっきの言い方だと他の神もいて、そして転生するのは僕だけじゃなかった。前に何人かいただろう。そして、何も知らず放り出された者いると...


そう思うとぞっとする。




「それでは、君の条件を聞かせてくれまいか?」




どういう条件にするかかなり迷う、自分の出した条件があまりにも強欲すぎると絶対ヤバい、チートなんか頼んだらもっとヤバい。罪深い自分がそんな好条件で転生できるはずがない。


考えろ


一言間違えれば、転生からの即死亡だ。


ぼくは、考え込んだ。自分のもてる知恵を絞って必要最低限の生きる権利を得るために。


神も僕が考え込んでいるとこを何にも言わないなら時間制限もないはず、ならじっくり考えよう機嫌を損ねない程度の時間で必要最低限に生きる条件を!




そして、小一時間程度の時間が過ぎた






「おまたせしました。」




僕の答えが出た。




「ほう、聞かせてくれ」




神の言葉にはひっかかる言葉がある。


まず、心優しきものが笑って暮らせる世界が見たい。


これが一番ひっかかった。


そう神は、僕みたいな穢れた魂を送り心優しき者を救えということだ。


だが、小説のように普通の人間を送ることができない。


それは、きっと何かの条件がある、でもそこまで考える必要がないようだ。




「どうか、僕に心優しき者を導く必要最低限の能力をください!分をわきまえています。自分は穢れた人間だと!だから力など求めません!すこしで良いんです!僕にかれらを導くすべを!」




僕の答えはこれしかない。変に駆け引きをしたら絶対負ける。相手は神だ。


どうかあっていてくれ




「ハハハハハ、そうか君みたいな人間は初めてだよ。正解だ。君みたいに分をわきまえた者もいた。だが自分のことしか考えておらんかった!多くはそんなんだ、自分が常に世界の中心だと考えている馬鹿どもがな!」




神は嬉しそうに笑う。


何とか僕の答えは間違えていなかった!


ぼくに近い答えを出した者がいたといったが多分それは心優しき者を導く必要最低限の能力じゃない、自分が生きるための必要最低限の力だ。僕は自分のための条件など最初から聞いてもらえるはずがない、最初から心優しき者のためなのだ。




「君は面白いね、非常に気に入ったよ。ならもう一つだけ条件を出すことを許可しよう。」




神は笑みを浮かべながら僕に言う。


これは、絶対ひっかけだ。


間違えない。これでも何千人もの人を相手にしてきたんだ。


ここで、自分のために多くの者が要求するだろう!だが、それは絶対間違えだ!


僕たちには、最初から自分のためのものを要求する資格がないんだ。




「なら、前僕が、生きていた世界に妹がいます、なら彼女が幸せになれるよう見守ってもらえませんか?たとえ神が世界に干渉できずとも見守ることはできますよね?」




これなら、きっと大丈夫だ。そして僕の最後の心残り、僕がホストを始めたのは、すべて家族のためだ。


人を騙したのも、人を陥れたのも全部愛する家族のため。


自分には父親がいなく、たった一人で僕たち兄妹を育てた母。


そして、素直でいつも慕ってくれる妹。


僕は、二人のためならば、なんだってする。例え人を殺しても...




「実に素晴らしい!!!本当に君は面白い!よかろう!その条件!いや、願いを叶えよう!」




神は笑いながら急にはしゃぎだした。




「気に入った!実に気に入った!最後の最後まで自分の以外の者のために願うか、歌舞伎町ナンバー1のホストだとは、思えないな!よかろう、君に一つだけ特別な物をささげよう。これを幸運か災いか決めるのはお前だが、これは、私が与えられる力だが決して特別ではないぞ。さぁ、ゆけ」




神がそういうと、手を僕の顔にかざした。


すると、だんだん暗くいなっていった。


おそらくこのまま転生するのだろう。




そして自分の転生する世界が思った以上に過酷だと知る余地もなかった。

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