黒く長い髪

冷えた空気の中

背まで伸ばした黒髪の

舞う舞う烏の艶色よ

吐く息 白く 白く

寒さの中で

揺らり揺らりメトロノーム


浅葱の服に

ほどよい上背

こんなにも黒髪が似合う人は

他にいないだろう


毎朝

少し危ない僕が見ているだなんて

黒髪の人は思わない

今日も後ろをつけて

ゆらゆらする

この人を見ていた


ほう

と、声が出てしまう

空とか海とか

朝焼け夕焼け

世の中の綺麗は綺麗だけれど

人に対して綺麗だとか

今の自分は黒髪の

この人が一番綺麗だと思うのだ


どんな人間だとしても

あの揺れる黒い髪は

僕のすべてだった

年月はすべてを変える

もうすぐ、この人とお別れだ


綺麗な人

さようなら

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