第2話

 相原は一日の大学の講義を終え、過去の出来事を振り返りながら帰路につく。


 相原祐樹は高校二年生の頃に人生で初めて彼女が出来た。告白され舞い上がった彼は、付き合うことになった女の子と幸せな学生生活を過ごすはずだった。


 だが彼は告白されたことに舞い上がり、彼女がどういう人物なのかということを詳しく確認するということをしていなかった。


 付き合ってからその子のことを知っていけば良い場合もあるが、彼女はいわゆる『心が病んでいる』女の子だった。


 束縛が激しく、学校で他の女の子と少し話をしただけで怒る。

 ふとしたことで二人でいるときに刃物を持ち出してくることもあった。


 数ヵ月で耐えられなくなった相原は別れを切り出すも、自殺すると脅されどうすることも出来なくなった。そして相原がとった行動は『転校』だった。


 両親を無我夢中で説得し一人暮らしをする家を探し、なんと二週間で手続きを終わらせ在学していた学校から去った。


 幸い不動産業をしていた親戚の力を借り、部屋を早めに借りることが出来たことが幸いだった。


 そして相原はもともと所属していた陸上部をやめ、転校先の学校では勉強を第一に優先するようになった。


「身を守るためには物理的な手段だけじゃ駄目だ。法律を勉強しよう。そして俺は法律を武器に自由に生きるんだ」


 そして法学部に入学、その過程で今後の人生で仕事をする上で役に立ちそうだと取得した資格が『宅建』だった。ランクが低い大学に入学したのは『学費の免除制度』がある大学だったからということが理由で、色々なことに時間が使える大学という場所は、自分のやり方次第でいくらでも自己研鑽することが出来る為、単位の取りやすい難易度が低い大学というのが理想だった。


「まぁ……それが原因でまたやっかいな女の子に目を付けらたんだから、そういう星のもとに生まれたのかもしれないなぁ……」


 ふぅと溜息をつきながら借りているアパートを目指す。


「縁野さんは宅建をとったって理由で声をかけたって言ってたけど、それだけで俺に興味を持ったりするもんだろうか?」


 そんなことを呟きながら帰宅した。

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