カノジョと一緒の大晦日。







 ――大晦日。


「今年は、いろんなことがあったね……」

「そうだなぁ」


 俺とこのはは、近所の神社の列に並びながらそう言葉を交わしていた。

 日付の変わるころ。雪降るその場所で、彼女はマフラーを首に巻いている。白い息を愛おし気に見送って、こっそりと俺の手を握ってきた。

 少しばかり驚いたが、俺はそれを握り返す。


「長年の気持ちが伝わったんだもん! 良い一年だったよ!」

「それを言うなら、俺だって同じだよ?」

「えへへ、お揃いだね!」


 このはは、蕩けたような笑顔を浮かべながら俺に身を寄せる。

 周囲の目などもはや気にはならない、といった感じだった。


「あ、除夜の鐘の音だ! ――あけましておめでとう!!」


 その時、遠くから鐘の音が聞こえた。

 恋人はそれに気づくと、こちらより先にそう言う。


「あぁ、今年もよろしくな?」

「もちろん!」


 そして、そう挨拶を交わした。

 そうこうしているうちに、俺たちは賽銭箱の前に着く。お金を投げ入れて、お祈りをする。列から離れておみくじを引きに向かうことにした。

 その時、不意に彼女がこう訊いてくる。


「和真は、なんてお願いした?」

「ん――」


 俺はとくに隠すこともなく、こう言った。



「このはと、もっと仲良くなりたい、ってね」



 すると、このはが――。



「すごい、わたしも同じだよ!」



 そう言うのだった。

 俺とこのはは、互いの顔を見合わせて笑う。




 今年はついに受験だし、それでいいのか、とも思ったけど。

 このはと一緒なら悪くないだろう、そう感じた。




 こうして、俺と彼女の新しい一年が幕を上げたのである。



 

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