カノジョたちと、俺たちのクリスマスの始まり。
「どうして、こうなるんですか……」
「あらあら。いいじゃないの、アリスちゃん」
「あぁ、母さんの言う通りだぞ。いつもお世話になっているのなら、それはもうファミリーみたいなものじゃないか!」
――そして、クリスマス当日。
アリスの家には、健太の姿があった。大きく肩を落とすアリスに対して、彼女の両親は至って平然としている。むしろ彼のことを歓迎しており、握手を求めていた。
「あ、あはは……。今日はお招きいただき、ありがとうございます」
さすがの健太も、想定外だったのだろう。
二人に挨拶をしながらも、どこか苦笑いを浮かべていた。
「何を言うんだ! 部下から聞いたが、キミはアリスを救ったナイトなのだろう? そのように遠慮をする必要はどこにもないさ!!」
「お父様!? ナ、ナイトって何の冗談――」
「ん、アリスも話していたじゃないか。この青年に、海で助けてもらったと」
「そ、それは……!!」
顎に手を当てて首を傾げる、アリスの父。
明かされたくない事実を公にされ、少女は顔を真っ赤にした。健太と父を交互に見て、うつむいてしまう。健太はそんな彼女を見て、こう言った。
「あはは、それはその場の流れですよ。それより――」
にっこりと笑って。
「今日はほんの少しだけですが、一緒に楽しめたら幸いです」――と。
◆
「和真、次はどこに行きたい?」
「ん、そうだな。このはは、どこに行きたい?」
「んー、と。そうだなぁ……」
俺とこのははファミレスを出て、二人でイルミネーション煌めく街を歩いていた。今日はアリスたちもいない、平凡的な学生のデートを楽しんでいる。
これはこれで、やっぱり気持ちが安らいだ。
手には彼女と選んだ、クリスマスケーキを持って。
「身体が冷えるとまずいから、早めに家に戻るか?」
「ううん! もう少しだけ、時間良いかな?」
俺が提案すると、何か思いついたのか。
このはが数歩先で振り返って、笑うのだった。
「どこか、行きたいのか?」
「うん。えっと、ね――」
訊ねると、彼女は少し気恥ずかしそうに言う。
「わたしたちが、初めて会った場所に行きたいな――って」
白い息に、想いを乗せて。
駆け寄ってきて、俺の手を掴むのだ。
「分かったよ、このは」
「うん! それじゃ、行こっか!」
元気いっぱいの、俺のカノジョ。
弾むような声に乗せられて、俺の心も自然と踊るのだった。
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