カノジョたちと、俺たちのクリスマスの始まり。







「どうして、こうなるんですか……」

「あらあら。いいじゃないの、アリスちゃん」

「あぁ、母さんの言う通りだぞ。いつもお世話になっているのなら、それはもうファミリーみたいなものじゃないか!」



 ――そして、クリスマス当日。

 アリスの家には、健太の姿があった。大きく肩を落とすアリスに対して、彼女の両親は至って平然としている。むしろ彼のことを歓迎しており、握手を求めていた。



「あ、あはは……。今日はお招きいただき、ありがとうございます」



 さすがの健太も、想定外だったのだろう。

 二人に挨拶をしながらも、どこか苦笑いを浮かべていた。



「何を言うんだ! 部下から聞いたが、キミはアリスを救ったナイトなのだろう? そのように遠慮をする必要はどこにもないさ!!」

「お父様!? ナ、ナイトって何の冗談――」

「ん、アリスも話していたじゃないか。この青年に、海で助けてもらったと」

「そ、それは……!!」



 顎に手を当てて首を傾げる、アリスの父。

 明かされたくない事実を公にされ、少女は顔を真っ赤にした。健太と父を交互に見て、うつむいてしまう。健太はそんな彼女を見て、こう言った。



「あはは、それはその場の流れですよ。それより――」



 にっこりと笑って。



「今日はほんの少しだけですが、一緒に楽しめたら幸いです」――と。







「和真、次はどこに行きたい?」

「ん、そうだな。このはは、どこに行きたい?」

「んー、と。そうだなぁ……」



 俺とこのははファミレスを出て、二人でイルミネーション煌めく街を歩いていた。今日はアリスたちもいない、平凡的な学生のデートを楽しんでいる。

 これはこれで、やっぱり気持ちが安らいだ。

 手には彼女と選んだ、クリスマスケーキを持って。


「身体が冷えるとまずいから、早めに家に戻るか?」

「ううん! もう少しだけ、時間良いかな?」


 俺が提案すると、何か思いついたのか。

 このはが数歩先で振り返って、笑うのだった。


「どこか、行きたいのか?」

「うん。えっと、ね――」



 訊ねると、彼女は少し気恥ずかしそうに言う。




「わたしたちが、初めて会った場所に行きたいな――って」




 白い息に、想いを乗せて。

 駆け寄ってきて、俺の手を掴むのだ。



「分かったよ、このは」

「うん! それじゃ、行こっか!」





 元気いっぱいの、俺のカノジョ。

 弾むような声に乗せられて、俺の心も自然と踊るのだった。



 


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