カノジョと一緒に従妹のクラスへ。
「クレープ、おいひいね!」
「こら、このは? 食べながら喋るのは行儀悪いぞ」
「はぁい」
俺とこのはは、ひとまず学校の中庭にある椅子に座っていた。
噴水があるあたり、やはり私立というところか。そう思いながら俺は、彼女と一緒に買ったバナナクレープを食べるのだった。
このははチョコバナナを頼んだ。
食いしん坊の異名そのままに、口の端にクリームを付けながら食べる。
「よっと」
「あっ……!」
俺はそのクリームを指ですくって舐めた。
何気なくしたことだったが、それによって彼女は真っ赤になる。
「もぅ、学校でなんて恥ずかしいよぅ」
そして周囲をキョロキョロ見回してから。
ホッとした、そんな表情を浮かべるのだった。
ひとまず誰にも見られなかったらしい。人見知りというか恥ずかしがり屋というか。メイド服みたいな可愛い格好をするのに抵抗はないのが、また不思議に思えた。
本人曰く、アレは役になり切ってるから、だとか。
「ねぇ、和真。これからどこ回る?」
「そうだな……」
さて、そんなことを考えていると。
このはが不意に、そう訊いてきた。
「そういえば、アリスのクラスは何をやっているんだ?」
そして、思い出したのは従妹のこと。
すっかり忘れていたが、アリスもこの学校の生徒だった。だとすれば、少しばかり冷やかし――もとい、挨拶に行っても良いだろう。
「えっと、アリスちゃんのクラスは――お化け屋敷だね!」
「ほう、お化けか」
俺は少しだけ想像して、笑いそうになった。
頭の中でアリスが、ちんちくりんなお化けに扮して可愛がられている図が浮かんだのだ。これは間違いなくネタになる。――行こうではないか。
「それじゃ、とりあえず行ってみるか」
「そうだね!」
そんなこんなで、俺たちはアリスのクラスを目指すのだった。
◆
――そして。
「意外と本格的だな」
「うぅう、怖いよかずまぁ……」
到着後、すぐに中へと通された俺とこのは。
薄暗闇の中を慎重に進む。どんよりとした空気が立ち込めている室内は、なかなかの完成度を誇っていた。このはが完全に怯えて、俺にしがみ付いている。
うむ、悪くない。
「大丈夫だって、このは。このはは、俺が――」
そう思って、俺はいつもの言葉を口にしようとした。
その時だ。
「お前らの血は、何色だァ……!」
「へ……?」
地を這うような女の子の声が、耳元から聞こえてきたのは。
寒気がした。
「聞いている。お前らの血は――」
ゆっくりと振り返る。
すると、そこにいたのは――。
「何色だァァァァァァァ!?」
「うわああああああああ!?」
鬼の形相を浮かべ、首をがくんと横に倒したアリス。
あまりの姿に、俺は思わず腰を抜かすのだった。
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