カノジョの友人登場と、学園祭デートの始まり。







「もぅ、柚葉ちゃん! 和真をそそのかしたりして!」

「ごめんて、このは嬢! 彼氏さんだとは知らんくって!」

「あはは。二人とも、そのくらいにして……な?」


 一悶着が終わって。

 俺とこのは、そして彼女の友人という少女――柚葉は、休憩室で話していた。

 眼鏡をかけた、どこか剽軽な印象を受ける少女はあの騒動の後、このはに一番最初に声をかけてくれたらしい。元々このはの悪評は嘘だと提言していてくれていたらしく、疑いが晴れてからは非常に良くしてくれている、とのことだった。


「それにしても、このは嬢のカレシ、って言うからどないなイケメンが来るかと思えば。案外、普通な感じの人なんやな!」

「まぁ、ね。それはよく言われるよ」

「もう、やめてよ柚葉ちゃん!」


 このは、顔を真っ赤にして叫ぶ。

 しかし急に声を小さくして、恥ずかしそうに――。



「和真、誰よりもカッコいいもんっ」



 俺たちだけに聞こえるような声で、そう言った。

 頬がまた熱くなる。そんな俺の耳元で、柚葉がこう囁いた。



「いやぁ、彼氏さん? アンタ、愛されてますなぁ」

「あ、あはは……」



 否定できず、俺は頬を掻く。

 よりいっそうにニタニタとした柚葉は、よし! と、口にした。

 そして、このはに向かってこう言うのだ。



「このは嬢、今日はもう上がりでええよ?」

「え、でも……」



 それに困惑するこのは。

 しかし、柚葉は指折り数えて頷いた。



「このは嬢一人で、収支はプラスになってるからね! これ以上儲けると、先生方に目玉喰らうわ! そんなわけで、アンタはここから――」



 ――とん、と。

 このはを俺に押しやって、柚葉は笑った。



「彼氏さんの、専属メイドになったり!」――と。



 赤面する俺たち。

 しかし、この好意には甘えるべきだろう。

 俺が視線をやると、どこか恥ずかしそうにカノジョが言った。



「和真、それでいい?」

「いいですとも!!」



 思わず即答。

 すると、柚葉は大きな声でまた笑うのだった。



 こうして俺とこのはの、学園祭デートが始まったのである。



 

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