カノジョの高校で学園祭があるらしい。







「かーずまっ!」

「ん、どうしたんだ? 今日はやけにご機嫌だな」

「えへへー!」


 例の一件からしばらく。

 このはは徐々に元気を取り戻していった。

 龍馬も自主退学したらしいし、イジメに関与した女子も停学。今の彼女の周囲には、以前よりも理解者が多い状況だった。龍馬が流していた悪評が嘘だ、というのが分かっただけで大きく変わるものだ。


 そして今日、俺の恋人はウキウキで声をかけてきた。

 理由を訊くとこう答える。


「ウチの学校、もうすぐ学園祭なんだけどね? 出し物決まったんだ~!」

「へぇ、そういえばそんな時期か。何になったんだ?」

「えっとね~……」


 座っていたこのはは、なぜか立ち上がってポーズを決めた。

 そして――。



「メイド喫茶、なのです!!」



 そう、宣言した。

 俺はそれを聞いて、こう即答する。




「却下」

「なんで!?」




 すかさず、このはがツッコミを入れた。

 しかし俺は腕を組んで譲らない。なぜなら、大きな問題があったからだ。

 そしてそれは、俺たちの平穏に茶々を入れる者が現れる可能性をはらんでいた。俺は思い切り不服な顔をして、このはに告げる。



「今よりも多くの人が、このはの魅力に気づいたらどうなる? それはすなわち、俺たち二人の時間が減るかもしれないわけだ。つまり――」

「つまり……?」



 首を傾げる彼女に、俺はハッキリと言った。





「俺の嫉妬だ!!」――と。





 静まり返る部屋。

 ずいぶんと大きくなったモモの欠伸さえも、聞こえるくらいに。

 しばしの間を置いてから、このはは――。



「あはは! 大丈夫だよ!」



 そう笑った。



「なんで、そう言い切れるんだ?」

「だってわたしが好きなのは、和真以外にあり得ないもん!」

「ふあっ!?」



 俺がそっぽを向きながら言うと、彼女が胸に飛び込んできた。

 そして、頬に軽くキスをしてくる。



「実はもう、何人かに告白されてるんだよ? でも、断ってる」

「そ、そうなのか……?」

「うん! だって、和真がいるもーん!」



 胸にいつものように擦り寄ってくる、このは。

 俺が撫でると、気持ちよさそうに目を細めるのだった。

 そして、こう言う。



「だから、むしろ楽しみにしてほしいな。学園祭のこと」

「このは……」



 俺はそんな彼女の言葉に――。



「分かったよ。当日は、俺も行くからな?」

「うん! 待ってる!!」




 微笑みながら、答えるのだった。




 

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