カノジョと俺のことを考える親友たち。
「あの二人は、本当にウブすぎます……!」
「まぁまぁ、アリスちゃんも落ち着いて」
「久保さんもそう思わないんですか!? ――付き合ったは良いものの、まだキスもしていない! 手を繋いで頭を撫でて、ギュッとするまでいっているのに!!」
「いやぁ、それこそ俺たちが口出すことじゃないんじゃないかなぁ?」
「それは、そうですが……」
夕方のコーヒーショップにて。
アリスと健太の二人は、テーブルを挟んで顔を突き合わせていた。
この話し合いは少女から持ち出されたもの。健太としては期待もあったりしたが、あって早々にアリスが放った言葉で意気消沈した。
曰く――【従兄さんとお姉様は付き合っているのに、じれったい】とのこと。
和真とこのはが付き合い始めたあの日から、かれこれ二週間が経過していた。
あれだけお互いを想い合っていた二人だ。まだ学生であるということを加味しても、付き合いだしたらとんとん拍子で行くはず、アリスはそう思っていた。
しかし、それが蓋を開けてみれば――なんということか。
「このはお姉様曰く、毎日なでなでしてもらってるんだぁ、とのことですが。キスはしたのかと訊くと――『キ、キキキキキキ、キスゥ!? 恥ずかしいよぉ!』」
「あはは、このはちゃんらしいね」
「笑い事ではありません!」
「はい、すいません」
アリスの完璧な演技に健太が笑う。
しかし、ジト目で睨まれてすぐに引き下がった。
勢いで立ち上がっていた少女は席に座り直し、カフェオレを口に含む。そして呑み込んでから、深くため息をつくのだった。
「久保さんから見て、兄さんはどうなんですか?」
「どう、か――惚気は言うようになったが、進んではいないらしいな」
「やっぱり、そうですよね……」
――ダメだ、このままじゃ埒が明かない。
アリスは本気でそう考えた。
せっかく健太と共謀――もとい、協力して二人に働きかけたのに。このままでは、一向に前には進まないではないか、と。
アリスとしては、このはを取られるのは嫌だった。
それでも、ズルズルといって不幸せになられるのはもっと嫌なのだ。
「私はなにも、肉体関係を持て、というのではないのです」
「そうだね。これ、全年齢向けだからね」
「なにを、仰っているのです?」
「はい、すみません」
相手の意味不明な発言に首を傾げつつ、アリスはまたため息。
そんな彼女に青年は言った。
「まぁ、二人のペース、ってのもあるさ。俺たちにできるのは、舞台を整えてあげることくらいかな? 例えば、これとか……」
「なんですか? これ」
おもむろに、彼が取り出したビラに首を傾げるアリス。
しかし、目を通してハッとした。
「これです! 久保さん、たまには役に立つじゃないですか!」
「ははは。たまには、ね?」
アリスは健太の苦笑いを無視し、小さくガッツポーズ。
そしてすぐに、このはへ電話をかけるのだった。
◆
「夏祭り? あぁ、そういえばそんな時期か」
「うん! アリスちゃんが、いつもの四人で行かないか、って!」
「そうだな。楽しそうだし、良いな」
「えへへ!」
電話を終えると、このはが元気いっぱいに提案してきた。
それとは、この県下で最も大きな夏祭りの誘い。毎年夏休みの中頃に開催されており、カップルなんかは決まってそこに向かっているらしい。
去年までは無関係だったので忘れていた。
これは、アリスに感謝しなければならないだろう。
「楽しみだなぁ、みんなでお祭り。それに、綿あめにりんご飴……!」
「食いしん坊だよな、このはって」
「むぅ、和真ぁ?」
「あはは、ごめんって!」
からかうと、不服そうに頬を膨らせる彼女。
でも、そんな姿も愛おしかった。
「楽しみだな、夏祭り」
俺は窓の外に目を向けて、そう口にする。
このはも頷いて、笑った。
こうして、俺たちの次のイベントが決定したのだった。
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