幼馴染に対する俺の気持ち。
「さぁ、バーベキューだ!!」
「元気ですねぇ、先輩は」
ひとしきり泳いで、日も暮れ始めた頃。
俺たちはお手伝いさんの力も借りながら、バーベキューの準備を始めた。俺とアリスは運動経験が少ないためにぐったりしていたが、元体育会系の二人は元気そのもの。率先して準備を進めていた。
「疲れたなら、アリスちゃんと一緒に休んでいるといいさ。俺は俺で、少しこのはちゃんと話したいことあるし」
「このはと話したいこと? なんですか?」
「いや、大したことじゃないさ」
その最中に、久保先輩は俺にそう言う。
首を傾げると笑顔を浮かべた。
「心配しなくても、狙ってなんかないさ! お前のだからな!」
「ば――なにを言うんですか!?」
そして、そんなふざけたことを口にする。
俺は思わず声を上げて否定した。
すると、
「……そう思ってんの、お前だけだよ」
「へ……?」
「いいから、休んでこい!」
何やら小声で意味深なことを漏らす。
またも疑問が浮かんでしまったのだが、それを問いただす暇も与えられなかった。回れ右をさせられて、背中をポンと押される。
仕方ない。
ここは言われた通り、身体を休めてから考えよう。
「はぁ、それにしても……」
俺はボンヤリと木陰に移動しながら、こう思うのだった。
このはの、先日のラインはなんだったのだろう、と。
「なにか言いにくいことでもあるのか……?」
腕を組み、自然と声に出していた。
それほどまでに不自然で、不可思議な雰囲気だったから。でも――。
「踏み込んでも良いのかな……」
「なにをブツブツ言っているんですか」
「お、っと! いや、何でもないよ」
と、そこでアリスに話しかけられた。
俺は少し驚きながらも、はぐらかす。
「そうですか。それなら、少しお話いいですか?」
「え、話……?」
そうすると、今度はアリスからそう切り出してきた。
俺は特に断る理由もないので、頷きながら従兄妹の隣に腰を下ろす。
「さて。これは、真剣なお話なのですが――」
少女は、俺の目をまっすぐ見つめてこう訊いてきた。
「和真兄さんは、このはお姉様のことを――――」
◆
「このはちゃん! 少し、いいかな」
「はい、なんですか?」
健太はこのはに声をかけた。
給仕の人がいるからと、手で少し離れた場所に彼女を誘導する。
そして、こう訊ねるのだった。
「聞いておきたいんだ。このはちゃんは――」
ふっと、一度息をついて。
「橋本のこと、どれだけ好きなのか、をね?」――と。
◆
「俺が、このはのこと――どれだけ好きか?」
「そうです。傍から見ていて、兄さんがお姉様に好意を持っているのは明らかですから。ハッキリと聞いておきたく思いまして」
「あ、あはは……。そんなにバレバレ?」
「えぇ、常に視線で追ってましたから」
「マジで?」
「それに私とのラインでの会話、そちらから切り出すのは全部お姉様とのことばかりです。これで察せないのは、おそらく貴方だけかと」
「う、わー……」
従兄妹に淡々と呆れられ、俺の頬は熱くなった。
我ながら露骨というか。物事を隠すのが下手すぎだった。
「まったく、情けない従兄ですね」
「ははは。面目ない」
俺は謝罪するように頭を下げる。
するとアリスは、ため息をつきながら改めて訊いてきた。
「それで、答えは?」
ここまできたら、隠す必要もないだろう。
俺は波の音に掻き消されないように、しっかりとこう口にするのだった。
「あぁ、好きだよ。このはは、俺にとって――」
少し、昔を思い出しながら。
「初恋の人で、今でもずっと好きな人だから」――と。
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