幼馴染に対する俺の気持ち。







「さぁ、バーベキューだ!!」

「元気ですねぇ、先輩は」


 ひとしきり泳いで、日も暮れ始めた頃。

 俺たちはお手伝いさんの力も借りながら、バーベキューの準備を始めた。俺とアリスは運動経験が少ないためにぐったりしていたが、元体育会系の二人は元気そのもの。率先して準備を進めていた。


「疲れたなら、アリスちゃんと一緒に休んでいるといいさ。俺は俺で、少しこのはちゃんと話したいことあるし」

「このはと話したいこと? なんですか?」

「いや、大したことじゃないさ」


 その最中に、久保先輩は俺にそう言う。

 首を傾げると笑顔を浮かべた。


「心配しなくても、狙ってなんかないさ! お前のだからな!」

「ば――なにを言うんですか!?」


 そして、そんなふざけたことを口にする。

 俺は思わず声を上げて否定した。

 すると、


「……そう思ってんの、お前だけだよ」

「へ……?」

「いいから、休んでこい!」


 何やら小声で意味深なことを漏らす。

 またも疑問が浮かんでしまったのだが、それを問いただす暇も与えられなかった。回れ右をさせられて、背中をポンと押される。

 仕方ない。

 ここは言われた通り、身体を休めてから考えよう。



「はぁ、それにしても……」



 俺はボンヤリと木陰に移動しながら、こう思うのだった。

 このはの、先日のラインはなんだったのだろう、と。


「なにか言いにくいことでもあるのか……?」


 腕を組み、自然と声に出していた。

 それほどまでに不自然で、不可思議な雰囲気だったから。でも――。


「踏み込んでも良いのかな……」

「なにをブツブツ言っているんですか」

「お、っと! いや、何でもないよ」


 と、そこでアリスに話しかけられた。

 俺は少し驚きながらも、はぐらかす。


「そうですか。それなら、少しお話いいですか?」

「え、話……?」


 そうすると、今度はアリスからそう切り出してきた。

 俺は特に断る理由もないので、頷きながら従兄妹の隣に腰を下ろす。


「さて。これは、真剣なお話なのですが――」



 少女は、俺の目をまっすぐ見つめてこう訊いてきた。




「和真兄さんは、このはお姉様のことを――――」







「このはちゃん! 少し、いいかな」

「はい、なんですか?」


 健太はこのはに声をかけた。

 給仕の人がいるからと、手で少し離れた場所に彼女を誘導する。

 そして、こう訊ねるのだった。




「聞いておきたいんだ。このはちゃんは――」




 ふっと、一度息をついて。




「橋本のこと、どれだけ好きなのか、をね?」――と。









「俺が、このはのこと――どれだけ好きか?」

「そうです。傍から見ていて、兄さんがお姉様に好意を持っているのは明らかですから。ハッキリと聞いておきたく思いまして」

「あ、あはは……。そんなにバレバレ?」

「えぇ、常に視線で追ってましたから」

「マジで?」

「それに私とのラインでの会話、そちらから切り出すのは全部お姉様とのことばかりです。これで察せないのは、おそらく貴方だけかと」

「う、わー……」



 従兄妹に淡々と呆れられ、俺の頬は熱くなった。

 我ながら露骨というか。物事を隠すのが下手すぎだった。


「まったく、情けない従兄ですね」

「ははは。面目ない」


 俺は謝罪するように頭を下げる。

 するとアリスは、ため息をつきながら改めて訊いてきた。



「それで、答えは?」



 ここまできたら、隠す必要もないだろう。

 俺は波の音に掻き消されないように、しっかりとこう口にするのだった。





「あぁ、好きだよ。このはは、俺にとって――」




 少し、昔を思い出しながら。






「初恋の人で、今でもずっと好きな人だから」――と。




 

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