幼馴染と俺が少ししか登場しない。







「貴方たちはなんですか! ここはプライベートビーチですよ!?」

「へぇ、日本にプライベートビーチなんてあったのか。初めて知ったぜ」


 アリスの訴えに、片方の男性がそう言って笑った。

 どうやら不法侵入だとか、そんな細かいことは気にしていないらしい。じっとりとした目つきで、アリスの身体を舐め回すように見ていた。

 そして、小さく鼻を鳴らしつつこう口にする。


「そんな丸刈りのダサい男より、俺たちといた方が楽しいぜ?」

「嫌です! どうして私が、貴方たちなんかと――」

「いいからいいから、こっちこいよ!」

「きゃっ……!」


 男の一人が、アリスに手を伸ばす。

 するとそれを遮って、


「やめろ」


 静かな怒りを込めた声で、健太が割って入った。

 アリスは青年の鍛えられた背中を見ながら、その場にへたり込む。


「この子に手を出すなら、容赦しないぞ」


 睨みを利かせる健太。

 しかし、男たちは数的有利を持っていたためか、彼を嘲笑った。


「へっ……! 一人で二人を相手に? バカじゃねぇの」

「お兄さん。可愛い子の前で良い格好したいの分かるけどよ、恥かくぜ?」

「勝手に言ってろ。お前らみたいに、生きてること自体が恥な奴らに言われても、気にはならないからな」

「な――!?」

「てめぇ、いまなんて言いやがった!?」


 それに対し、健太はニッと口角を上げる。そして――。



「あぁ、何度でも言うさ。この恥さらし野郎共」



 身構えて、そう言い放った。

 男たちの拳が健太に襲い掛かる。

 だが次の瞬間に、彼らは砂浜に仰向けに倒れていた。


「なにが、起きた!?」

「あぁ、言い忘れてたけど。俺、合気道の有段者だから」

「んだと……!?」


 完全に頭に血が上っているのだろう。

 二人の男は、何度となく健太に襲い掛かっては受け流され倒され、砂を噛む。



「この、野郎……!?」

「さて、それじゃ。これくらいで良いか」

「何言ってやがる」

「キミたち、周りを見たほうがいいよ」

「あん……? って、なんだアレ!!」



 そして、不意に青年が口にした言葉で男の一人が気づく。

 自分たちが、黒服の人物数名に睨まれていることに。



「先輩、間に合ってよかった……!」

「お、橋本。助かったよ!」



 その中に一組の男女――和真とこのはがいた。

 この黒服たちは、水瀬家のSP。健太が時間を稼いでいる間に、和真たちは彼らを呼びに行ったのだった。結果として、不埒者どもは窮地に立たされ――。



「ち、ちくしょう! なんだってんだ!!」



 ただただ、闇雲に走り去っていくのだった。

 それを見送りながら、健太はふっと息をつく。そして後ろを振り返り、



「大丈夫? ――アリスちゃん」



 爽やかな笑顔を浮かべて、少女に手を差し伸べるのだった。



「あ……」



 そこに至って、ようやくアリスは声を発する。

 しばしの間を置いてから、恥ずかしそうに自力で立ち上がって言った。



「半径一メートル、踏み込んでますよ。久保さん」





 少女は頬を赤らめる。

 それを見て、健太はまた笑うのだった。



 

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