幼馴染と水泳勝負をした。







「和真! こっちだよー!」

「そんなにはしゃぐなって! ていうか、泳ぐの速いな!?」

「えへへ、わたし水泳やってたから!」

「そういや、そうだった!!」


 まさかのスク水で参戦した幼馴染。

 そんな彼女と、まさかの競泳対決になってしまった。

 俺も泳げないわけではないが、それでもガチ勢には敵わない。そんなわけで、ぐんぐんと距離を開けられていた。

 ヤバい。

 これでは、男としての面子がもたない。


「うおおおおおおおおおおっ!?」


 なので俺は、全力のクロールでこのはを追跡した。

 そしてどうにか、追いついて……。



「つかまえた!!」

「きゃっ!」



 油断していたのだろう、彼女を後ろから抱きしめた。

 すると短い悲鳴を上げて幼馴染は笑って。



「あ――!」

「ん?」



 即座に、頬を赤らめた。

 なんだろう。一瞬だけ柔らかい感触があった気がする。



「どうした? このは」

「な、なななななんでもないよ!!」

「ん……?」



 ――なんだ?

 ずいぶんと動揺している幼馴染に、俺は首を傾げた。

 そうしていると、彼女はジト目でこう漏らす。




「和真、ホントに……! もう!」




 自分の胸を抱きしめながら。

 え、本当にどういう意味なのだろうか……?




「今度は和真の逃げる番だよ!」

「お、おう?」



 分からないまま、俺は逃げることとなった。

 そして、泳ぐことしばらく。




「はい、つかまえた!」




 俺はこのはに捕まって――。




「な、ちょ!? ――このは!?」

「えへへ。さっきのお返し、だよ?」




 後ろから、抱きしめられた。

 胸を押し当てられ、全身が硬直してしまう。

 必死に目で離れるように訴えるが、彼女はニッコリと笑うだけだった。




「あはは! そろそろ、浜に戻ろうか!」

「うぅ、なんだよ。それ……」





 幼馴染は、そう提案して俺の手を引く。

 なんだというのか。こっちは、頬を赤くするだけだった。



 

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