幼馴染と俺の関係。
「暑くなってきたなぁ、最近」
「あはは、そうだね。もう六月も終わりそうだもん」
気づけば、季節も移り変わろうとしていた。
幼馴染の着ている服も夏服に変わり、ずいぶんと薄くなっている。俺も俺とで、半袖に短パンスタイル。子猫のモモは夏が近づくにつれてダレてきていた。
そろそろ、アイスクリームとかが美味しい時期。
ふと、俺は冷蔵庫にそれがあったのを思い出すのだった。
「あぁ、アイスキャンディならあった気がする。取ってくるよ」
「ありがとぉ~」
そんなわけで、俺は少々退室。
◆
で、戻ってきた。
「はい、たしかソーダ味が好きだったよな?」
「うん! わたし、それ大好き!!」
俺はアイスキャンディをこのはに渡して、その隣に座る。
そして、ほぼ同時に食べ始めた。
「おいひぃねぇ」
「そうだな」
ついでに、モモにも何か冷たいものを。
そう思って氷を持ってきたのだが、これは正しいのだろうか。舐めてこそいないが、隣で涼んでいる。それなら、ひとまずいいか。
俺がそんな感じでボンヤリしていると、不意に幼馴染が話し始めた。
「そうそう、アリスちゃんと久保さん。ライン交換したんだって!」
「お! あれだけ拒否してたのにか!」
「うん、これは要チェックだよ!」
出てきたのは、従兄妹と先輩の動向。
あの日から久保さん、チーフの目を盗んでは客で来てるアリスに声をかけまくってたからな。――まぁ、俺が助力した部分もあるのだが。
とにもかくにも、思わぬ進展があったようで嬉しくなった。
「アリスの性格も、これで丸くなればなぁ……」
「あはは! アリスちゃんは、アレだからアリスちゃんなんだよ?」
「たしかにな。あの性格だからこそ、ってことか」
「うん! デレに期待だね!!」
共通の話題で盛り上がっていた。
その時だ。
「あ……!」
短く、幼馴染が声を上げたのは。
どうしたのかと見ると、その理由はすぐに分かった。
アイスキャンディが溶けて、彼女の服にかかったのである。薄い夏服のため、じんわりとシミが広がっていく。
「あぁ、やっちまったな――」
「そうだねぇ。よいしょっと」
「――って待て待て!?」
「……ん?」
俺は思わず顔を手で覆った。
なぜなら――。
「ここで脱ぐのかよ!?」
このはが、おもむろにシャツを脱ごうとしたからだ。
ボタンを外し、その――下着が、ちらっと!?
「あ、ごめんね。つい自分の家の感じだったよ」
「………………」
キョトンとした後に、笑いながら言うこのは。
まったく、この幼馴染は……。
「気を付けろよ? アリスじゃないけど、男は狼が多いんだから」
そう思って、俺はため息交じりに忠告した。
すると彼女は小さく、
「和真だけだもん」
頬を赤らめながら、そう口にするのだった。
「へ……?」
「えへへ、気にしなくていいよ!」
「お、おう……?」
何やら、煙に巻かれてしまった。
俺は言葉の意味が理解できず、とりあえずアイスを舐める。
「とりあえず、俺のシャツを着ていいよ」
「ありがと!」
そんな、夏の始まり。
俺たちの関係が、動き始める季節の始まりだった。
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