幼馴染と俺の関係。







「暑くなってきたなぁ、最近」

「あはは、そうだね。もう六月も終わりそうだもん」


 気づけば、季節も移り変わろうとしていた。

 幼馴染の着ている服も夏服に変わり、ずいぶんと薄くなっている。俺も俺とで、半袖に短パンスタイル。子猫のモモは夏が近づくにつれてダレてきていた。

 そろそろ、アイスクリームとかが美味しい時期。

 ふと、俺は冷蔵庫にそれがあったのを思い出すのだった。


「あぁ、アイスキャンディならあった気がする。取ってくるよ」

「ありがとぉ~」


 そんなわけで、俺は少々退室。







 で、戻ってきた。


「はい、たしかソーダ味が好きだったよな?」

「うん! わたし、それ大好き!!」


 俺はアイスキャンディをこのはに渡して、その隣に座る。

 そして、ほぼ同時に食べ始めた。


「おいひぃねぇ」

「そうだな」


 ついでに、モモにも何か冷たいものを。

 そう思って氷を持ってきたのだが、これは正しいのだろうか。舐めてこそいないが、隣で涼んでいる。それなら、ひとまずいいか。

 俺がそんな感じでボンヤリしていると、不意に幼馴染が話し始めた。



「そうそう、アリスちゃんと久保さん。ライン交換したんだって!」

「お! あれだけ拒否してたのにか!」

「うん、これは要チェックだよ!」



 出てきたのは、従兄妹と先輩の動向。

 あの日から久保さん、チーフの目を盗んでは客で来てるアリスに声をかけまくってたからな。――まぁ、俺が助力した部分もあるのだが。

 とにもかくにも、思わぬ進展があったようで嬉しくなった。



「アリスの性格も、これで丸くなればなぁ……」

「あはは! アリスちゃんは、アレだからアリスちゃんなんだよ?」

「たしかにな。あの性格だからこそ、ってことか」

「うん! デレに期待だね!!」



 共通の話題で盛り上がっていた。

 その時だ。



「あ……!」



 短く、幼馴染が声を上げたのは。

 どうしたのかと見ると、その理由はすぐに分かった。

 アイスキャンディが溶けて、彼女の服にかかったのである。薄い夏服のため、じんわりとシミが広がっていく。



「あぁ、やっちまったな――」

「そうだねぇ。よいしょっと」

「――って待て待て!?」

「……ん?」




 俺は思わず顔を手で覆った。

 なぜなら――。






「ここで脱ぐのかよ!?」






 このはが、おもむろにシャツを脱ごうとしたからだ。

 ボタンを外し、その――下着が、ちらっと!?



「あ、ごめんね。つい自分の家の感じだったよ」

「………………」



 キョトンとした後に、笑いながら言うこのは。

 まったく、この幼馴染は……。


「気を付けろよ? アリスじゃないけど、男は狼が多いんだから」


 そう思って、俺はため息交じりに忠告した。

 すると彼女は小さく、



「和真だけだもん」



 頬を赤らめながら、そう口にするのだった。


「へ……?」

「えへへ、気にしなくていいよ!」

「お、おう……?」



 何やら、煙に巻かれてしまった。

 俺は言葉の意味が理解できず、とりあえずアイスを舐める。



「とりあえず、俺のシャツを着ていいよ」

「ありがと!」






 そんな、夏の始まり。

 俺たちの関係が、動き始める季節の始まりだった。



 

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