幼馴染を家に送った。







「それにしても、まさか従兄妹だったとは……」

「ねー、びっくりだねぇ」



 アリスのことは母さんが車で送っていくことになった。

 そして俺は、いつもより遅くなったため幼馴染を送っている。すっかり日の落ちた街を、二人で歩いていた。街灯の明かりを頼りに、ゆっくりと進んでいく。

 話題に上がるのは、やはり従兄妹だったアリスのこと。


 まさか自分の叔母さんが、海外の方と結婚していたとは。

 日本に帰ってきたのも最近ということで、知る由もなかった。


「はぁ……」

「ん、どうした?」


 そんなことを考えていると、このはが不意にため息をついた。

 どうしたのかと見ると、彼女は自分の身体をジッと見つめている。首を傾げる俺に対して、ぼそりと彼女はこう漏らした。



「やっぱり、アリスちゃんみたいな可愛い子の方が良いのかな」――と。



 それはきっと、俺に宛てたものではなく。

 世間一般の男子に向けたものだと、そう思われた。



「このは……?」

「あ、あはは! ほら、わたしって背が高い方でしょ? だから……」



 俺が名前を呼ぶと、彼女は自分の独り言に気付いたらしい。

 慌てた様子でそう弁明をした。



 たしかに、このはは可愛いというより美人の部類。

 身長も平均以上で、手足もモデルのように長い。胸は――俺は、目を逸らした。



「んー……」



 でも、俺はこう思う。

 少なくとも俺にとってのこのはは――。



「大丈夫だよ」

「ふえ?」



 俺の言葉に、幼馴染は気の抜けた声を出す。

 そんな彼女に俺は、力強く笑ってこう言った。




「俺はこのはが可愛い、ってこと! ――たくさん、知ってるから!!」




 それは紛れもない本音。

 まっすぐに、それを口にした。すると、



「ひうっ!?」



 このはが、真っ赤になった。

 赤面する幼馴染も見慣れてきたが、やはり可愛い。

 俺はそんな彼女の頭を撫でながら笑った。そうすると、



「ありがとう、かずま――――き」

「え……?」



 なにか、最後の方に小さく言うこのは。

 聞き取れないくらいの大きさで、俺は訊き返してしまった。



「なんでもないよ! ほら、行こう?」



 そんな俺の手を取って、彼女は駆け足になる。

 わけがわからなかったが、俺は自然と微笑んでいた。



「急ぐなって、ゆっくり行こうぜ!」






 幼馴染にそう声をかけて。

 その日は、いつものように終わっていくのだった。


 

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