幼馴染が連れてきたのは。






「それで、どうしてこの子がここに?」

「わたしについてきたい、って聞かなくて……」

「お姉様の行くところなら、どこへでも!!」

「はぁ、さいですか」


 今日は俺とこのは、二人の他にもう一人。

 幼馴染の新しい友達――というか、後輩がやってきていた。

 その名も水瀬アリス。ハーフらしく、金の髪に蒼い瞳をしている。特に邪険に扱う気はないのだが、どうにも俺を見る目が厳しい気がするのは何故だろうか。

 とにもかくにも、このはに新しい友達ができたのはめでたいことだった。


「それじゃ、よろしく水瀬。このはの幼馴染で、橋本和真だ」

「……よろしくお願いします。橋本さん」


 差し出した手を無視された。

 まぁ、いきなり男の部屋に通されて緊張しているのだろう。

 そう思うことにして、俺は気持ちを切り替えた。


「お二人は普段、なにをされてるんですか?」

「なにを?」

「しているか?」


 そんな時に、水瀬はそう訊いてきた。

 俺と幼馴染は顔を見合わせる。何故かといえば、何もしてないから。



「えっと、俺はよく課題をしてるかな」

「わたしはモモと遊んでるよ?」

「たまに昼寝してるよな、このは」

「えへへ。この時間だと、お日様が気持ちいいんだぁ」



 俺とこのはは、普段のことを思い返しながら話した。

 ハプニングがあるにはあるが、大半はそんな感じなのだ。

 しかし、水瀬はそれに納得できないのか、立ち上がってこう叫ぶ。



「お、男が女の子を連れ込んでするって言ったら、一つしかないでしょう!?」



 顔を真っ赤にしながら。

 目をぐるぐるさせて、後輩は訴えた。


「いや、ないけど……」

「そんなわけあります!? こんな綺麗なお姉様を前に!?」

「あの、アリスちゃん? いったい、何を言ってるの?」

「お姉様!? この男に口止めされているのですか! それとも弱みを!?」


 しかし、俺とこのはに否定され混乱する水瀬である。


「ぐぎぎ、おのれ橋本――お姉様の心を弄んで……!」

「なぜそうなる!?」


 最後にはそんなことを言うので、俺は思わずそうツッコんだ。

 すると――。



「う、うるさいです! 天誅!!」

「うお!? 急に手を上げる奴があるか!?」



 思い切り右ストレートを放ってきた。

 俺はそれを何とか受け止めて、彼女を押しとどめる。



「あわわっわ、ふたりともけんかしないでぇ!?」



 その結果、幼馴染まで混乱し始めた。

 手を前でパタパタ振りながら、仲裁を図ろうとする。

 しかしながら、それも効果なし。俺は渋々ながら、水瀬を――。




「和真? 新しいお友達――あらまぁ、アリスちゃん!?」




 ――受け流そうとした、その時だった。

 部屋の出入り口から、母さんの声が聞こえたのは。

 そして、その声に反応したのは俺だけではなかった。





「叔母様!?」






 ――は?







「なぁ、水瀬? お前、いまなんて言った?」

「え、いえ。どうして私の叔母様が、ここにいるのかと……」







 ――へ?







 俺は首を傾げる。

 そうしていると、母が笑いながら言った。




「貴方たち、小さかったから憶えてないわよね!」――と。




 俺と水瀬は顔を見合わせる。

 すると、ついに我が母は決定的なことを口にした。




「貴方たち、和真とアリスちゃんは――」




 なんとも、気軽な様子で。






「従兄妹同士、よ?」――と。





 俺と水瀬は、再び顔を見合わせてから叫ぶのだった。





「ええええええええええええええええええええええええっ!?」

「はあああああああああああああああああああああああっ!?」





 夕暮れの街に、その声は響き渡った。



 

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