幼馴染に友達?ができた。







「如月、お姉様……」



 水瀬アリスは、今か今かと胸を躍らせていた。

 早く、この高鳴る気持ちを伝えたい。

 その相手が来るかは分からない。



 それでも、彼女にとってこれは――初めての告白だった。




「あぁ、あの鋭い眼差しに優しい微笑み。クールな外見に反して優しいお心! 他の皆さんが敵になったとしても、私はお姉様の味方です!!」




 ドキドキが止まらない。

 彼女のことを考えれば考えるほど、眠れぬ夜は続いた。

 そして、その時に決まって思い浮かぶのは、あの男の顔だった。



「橋本、和真……!!」



 一転して般若のような表情を浮かべるアリス。

 このはの幼馴染との情報は掴んでいたが、それにしても毎日のように家に通う関係はおかしいとしか言いようがない。

 しかも昨日に至ってはついに、お泊り会を敢行した。


 羨まし――ではなく、なんと不潔なことだろうか。


 不純異性交遊はいけないことだと思います。

 アリスは、一方的な憎悪を和真に対して向けていた。



「必ずや、悪い虫からお姉様をお救いしてみせます!」

「…………悪い虫?」




 そして、その時だった。

 彼女の宣言に、反応をする人物が現れたのは。

 アリスはハッとして、声のした方に向かって思わず叫んだ。




「如月お姉様、大好きです!!」――と。







 ――大好きです?


 それを聞いて、このはは首を傾げる。

 女の子から女の子に対して、大好きとはどういう意味だろうか、と。普通に考えれば、友人として好き、という意味合いになる。

 しかしこの子と自分は、まだ会うのも二度目だった。

 それで大好きとは、いささか不思議なこと。



「はぁ、はぁ……!」

「とりあえず、深呼吸して?」



 ひとまず、顔を赤らめて呼吸の荒い後輩にそう告げる。

 近づいて手を取ると、後輩――アリスは、震えた。



「あの、お返事を……!」



 そして、返答を求めてくる。

 このはは、少しだけ考えてから和真に言われたことを思い出した。


 しっかりと、向き合おう。


 そう思ってこう、静かに伝えるのだった。



「ありがとう――」




 頑張って、笑顔を浮かべながら。




「仲の良い、お友達になりましょう?」――と。




 愛らしい後輩は、それで満開の笑顔になった。

 このはに抱きつき、顔を猫のように擦り付けてくる。



「はい、お友達『から』! よろしくお願いいたします!!」



 この時、二人の認識に違いがあること。

 それを彼女たちは知らなかった。



 

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