幼馴染と和真はモモに救われた。






「にゃん?」



 モモは首を傾げた。

 先ほど廊下から大きな音がしたかと思えば、ご主人たちがどこか気まずそうに戻ってきたのだから。これは何かあったのだろう、そう察した。


「(思うに、ラッキーなんとかが発生したに違いにゃい)」


 モモはそう考えて、ひとまずベッドの上から様子を見ることにした。

 和真の方はまだ顔が赤く、このはは苦笑い。どうやら、事の次第を気にしているのは和真だけの様子だった。髪も乾かし終えた少女は、ベッドに腰掛けてモモを撫でる。


「(男のご主人は、気にしすぎだにゃ)」


 このはの手に頭をこすり付けながら、モモはそう考えた。

 そうしてしばらく、静かな時間が流れる。


「(どうするつもり、なのかにゃ?)」


 あまりに長い、気まずい沈黙は珍しい。

 モモはある種の警戒心を持ちながら、和真の動向を確認した。


 すると彼は、おもむろに振り返って――。


「あの、このは。さっきは――」


 謝罪しようとした。

 そのことを察知したモモは、


「にゃにゃ!(男のご主人! それは悪手だにゃ!)」

「きゃっ、どうしたの? モモ?」


 即座に、このはの肩に飛び掛かった。

 そうすることで、和真の言葉から注意を逸らす。それによって彼は言葉に詰まり、謝罪の機会を喪失した。すかさず、モモは次の手に移る。



「にゃぁん!」



 和真の着ていたパーカーの紐目がけてダイブ!

 そうすることで、今度は和真の頭から謝罪のことが抜け落ちた。



「あはは、モモは遊んでほしいみたいだね!」

「そう、だな!」



 そのタイミングで、このはが笑う。

 すると和真も苦笑いしつつ、ゆっくりとベッドに腰掛けるのだった。


 そして――。



「あ……」

「あ……」



 これは、完全に想定外だったのだが。

 モモと遊ぶ用の紐に手を伸ばした、二人の手が重なった。

 甘い空気が漂うのを確認しながらモモはこう思う。やれやれ――。




「にゃん(世話のかかるご主人たちだにゃ)」――と。



 

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