幼馴染とハプニングに巻き込まれた。
「ほらぁ、モモ? そーれ」
「にゃにゃ!!」
風呂上がりに俺は、モモと猫じゃらし代わりの紐で遊んでいた。
このはは今、入浴中。着替えは俺のシャツとジャージになってしまったけれど、致し方なしということで、彼女も了承してくれた。
どこかポーっとした表情だったのは、何故だろう?
「それにしても、お泊り会、か。小学生以来だな」
そう考えていると、ふと小さい頃のことを思い出した。
当時は頻繁にお互いの家を行き来していたのだが、それがまさか高校になって再開するとは。なかなかに分からない。
昔は俺が風呂に入っていると、このはが乱入してきたりしたが……。
「今は犯罪だもんな」
「みゃ?」
小さく笑うと、それを不思議そうに見上げながらモモが鳴いた。
俺は再び紐を投げて、猫と戯れる。その時だった。
「ん!? 停電か!?」
パツン、と。
部屋が真っ暗になったのは。
◆
「和真の家のお風呂、久しぶりだなぁ……」
一方でこのは。
彼女は数年ぶりの幼馴染宅の風呂に、感慨深くなっていた。
小学生時代を思い出し、こちらも思わず笑っている。
「あの頃の和真、可愛かったよね」
そして、彼の名を口にした。
基本的に童顔な和真だが、幼少期はなおのこと幼い顔立ちで。近所のおばさんたちからは、まるで姉妹のようだとからかわれたりしたものだった。
それが今はもう、しっかりした男の子になって。
ふと和真の身体つきを想像してしまったこのはは、顔を赤らめた。
「(うぅ、少し恥ずかしくなっちゃった)」
湯に顔を埋め。
誰に見られているわけでもない、その赤面を隠そうとした。
「さて、そろそろ上がろうかな?」
気持ちを切り替える。
そして、そう言って立ち上がった。
浴室から出てバスタオルで身体を拭き、下着をつける。
「ふわぁ、これが和真のシャツ……」
脱衣所のかごに入れてあった、彼のシャツを手に取って惚けてしまうこのは。
駄目だと分かっていながら、その匂いをかいだ。
すると、心が安らいでいく。
「んと、よいしょっと」
しかし、いつまでも悦に浸っているわけにはいかない。
彼女はそのシャツに袖を通した。その時だった。
「ふぇぇ、停電!?」
◆
「えっと、ブレーカーはこの辺り……」
俺はスマホの明かりを頼りに、家の中を進んでいた。
そして、やっとの思いでブレーカーのところにたどり着く。すると、
「ふえぇ、かずまぁ」
「え、このは? どうしてここに」
「わたし、暗いの苦手で……」
幼馴染が、どうやら近くにいるようだった。
俺はとりあえず、ブレーカーに手を伸ばして明かりをつける。その瞬間、
「うわっ!」
「きゃっ!」
視界不良のためかこのはと衝突し、揃って倒れこんだ。
俺は四つん這いになり、痛みに顔をしかめる。すると直後に明かりが灯って――。
「あ……」
「ひぅ……」
――俺たちは、言葉を失った。
まるで、この体勢は俺が幼馴染を押し倒したようで。
彼女のほのかに赤く染まった顔に、潤んだ瞳。ぶかぶかのシャツから、微かにはだけた肌。濡れた髪。そして――。
「――――!!」
思わず視線を下にやって、俺は声にならない悲鳴を上げるのだった。
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