幼馴染の手料理が絶品だった。
「すげぇ、美味いぃ!」
「あはは、大げさだよ和真」
「そんなことねぇって、なにこれ魔法!?」
「もう、恥ずかしいよ……!」
俺は今、心の底から感激している。
なぜなら、この美しく愛らしい幼馴染の絶品手料理を独り占めしているのだから。鮭をただ塩焼きにするのではなく、まさかのムニエルに。卵焼きは純日本風だが、ほんのりと甘い。味噌汁にしても、味加減が俺の舌にジャストフィット!!
「和と洋が、混ざっちゃってるけどね」
「いやいや! そんなの全然問題ないよ!?」
謙遜する幼馴染の言葉を、全力で否定する俺。
そしてまた一口、ムニエルを味わった。一瞬だけ天国が見える。
「それにしても、ここまでしっかり料理ができるなんて尊敬だよ」
「えへへ……」
俺はこのはに惚れ直しつつ、そう言った。
すると彼女は小恥ずかしそうに頬を掻きながら――。
「将来、良いお嫁さんになりたくて……頑張ってるの」
――ぽそり、頬を染めて。
俺はその瞬間に、どこか温かい気持ちになった。
いつか彼女も誰かと結婚する。こんな可愛くて家庭的な優しい子、放っておくなんて龍馬くらいなものだ。そう考えると、そのいつか、このはと共にあるまだ知らぬ男性が羨ましくなった。
嫉妬ではなく、純粋にお祝いしたい。
きっと、このはが好きになる人は、素敵な人に違いないから。
「大丈夫だよ、このは。絶対、良いお嫁さんになる! 俺が保証する!」
だからこそ、激励の意味も込めて俺はそう言った。
右の拳を握りしめて。すると、
「…………うん!」
彼女は少しだけ黙ってから、そう言って笑うのだった。
ホッとしたような。それでいてどこか複雑そうなそれに、思わず首を傾げる。
「ささ、食べたらお風呂だよ、和真!」
「あ、うん! そうだな!」
しかし、その答えは見えなくて。
俺は彼女に促されるままに、残りの食事を片づけるのだった。
◆
「俺が保証する、かぁ……」
このはは食器を洗いながら、ぽそりとつぶやいた。
和真は今、一足先に風呂に入っている。
「和真らしい、な」
そんな彼を思い浮かべつつ、ふっと息をついた。
そして、
「いつか、わたしの気持ちに気付いてくれたら――」
何かを口にしかけて。
「――ううん! 今は、純粋に楽しもう! そうしよう!」
ちょっとした迷いを振り切るように。
そう、決意を口にするのだった。
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