幼馴染が泊まることになった。







「…………と、雨だな。けっこう土砂降り」

「ほんとだねぇ」


 そんな話をしていた日の夕方。

 このはが帰ろうとして準備を始めた頃合い。

 にわか雨だろうか、物凄い勢いで雨が降り始めた。


「まぁ、一時的なのだと思うから。もうちょっと待ってみよう」

「うん、そうだね!」



 と、思っていたのだが。





「やまない。しかも酷くなってる」

「これは帰れないねぇ」


 雷が鳴り響き、風に木造の我が家は軋みを上げる。

 これはとても歩いて帰れるレベルを超えていた。車を出してもらおうかとも思ったが、あいにく両親は本日遅番。二人とも外出中だった。


 ということでこのはは、自分の母に電話で連絡。

 すると呆気ないほど簡単に――。


「あの、橋本さんの家ならお泊りオーケーよ、だって」

「マジかよ」


 ――まさか、まさかの外泊許可が出た。

 まぁ、昔馴染みの間柄だし。かといって、警戒心も薄すぎると思うが。



「まぁ、そうなったら仕方ないな。とりあえず、夕食を――」

「そうだね! わたし、頑張るよ!!」

「――えっと、冷食にしようと思ってたんだけど」

「余りものあるなら、作れるよ?」

「マジで?」



 気持ちを切り替えて、支度をしようとしたところ。

 このはからまさかの提案があった。すぐに部屋を出て、冷蔵庫の中を確認。



「うん、これだけあれば大丈夫!」



 彼女は、満面の笑みで答えた。



「そっか、それなら俺は風呂掃除してくるよ」

「分かったよ。わたしは、作り始めるね!」



 そんなこんなで。

 俺たちの二人っきりの夜は、ゆるゆると始まったのだった。



 

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