幼馴染が泊まることになった。
「…………と、雨だな。けっこう土砂降り」
「ほんとだねぇ」
そんな話をしていた日の夕方。
このはが帰ろうとして準備を始めた頃合い。
にわか雨だろうか、物凄い勢いで雨が降り始めた。
「まぁ、一時的なのだと思うから。もうちょっと待ってみよう」
「うん、そうだね!」
と、思っていたのだが。
◆
「やまない。しかも酷くなってる」
「これは帰れないねぇ」
雷が鳴り響き、風に木造の我が家は軋みを上げる。
これはとても歩いて帰れるレベルを超えていた。車を出してもらおうかとも思ったが、あいにく両親は本日遅番。二人とも外出中だった。
ということでこのはは、自分の母に電話で連絡。
すると呆気ないほど簡単に――。
「あの、橋本さんの家ならお泊りオーケーよ、だって」
「マジかよ」
――まさか、まさかの外泊許可が出た。
まぁ、昔馴染みの間柄だし。かといって、警戒心も薄すぎると思うが。
「まぁ、そうなったら仕方ないな。とりあえず、夕食を――」
「そうだね! わたし、頑張るよ!!」
「――えっと、冷食にしようと思ってたんだけど」
「余りものあるなら、作れるよ?」
「マジで?」
気持ちを切り替えて、支度をしようとしたところ。
このはからまさかの提案があった。すぐに部屋を出て、冷蔵庫の中を確認。
「うん、これだけあれば大丈夫!」
彼女は、満面の笑みで答えた。
「そっか、それなら俺は風呂掃除してくるよ」
「分かったよ。わたしは、作り始めるね!」
そんなこんなで。
俺たちの二人っきりの夜は、ゆるゆると始まったのだった。
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