幼馴染が快挙を成した。







「ねぇねぇ、和真!」

「どうした? このは」


 帰宅すると、例によって先にこのはが家にきていた。

 そしてドアを開けると、まるで放たれた弾丸のように俺のもとへやってくる。足元には猫のモモの姿があった。ずいぶんと、この部屋にも慣れてきた様子。


「もしかして、学校で嬉しいことでもあったのか?」

「うん! この前の実力テストで一位とったんだよ!!」

「えぇ!? 一位って、このはの学校って偏差値かなり高かったような……?」


 荷物を下ろしながら聞いていると、素で声が裏返った。

 改めて確認しておくが、俺とこのはは各々別の学校に通っている。俺はそこまで成績が良くなかったから、平凡な普通科の高校へ。

 対して彼女と龍馬は中学時代から成績が良く、県下屈指の進学校へ。

 そんなエリートの集まる学校の中で一番とは……。


「えへへ、凄いでしょ!」

「す、すごい。驚きすぎて、言葉を失うくらいには……」


 腰に手を当てて、自慢げに胸を張るこのは。

 そんな彼女を見て俺は、感嘆の声を漏らすことしかできなかった。

 だが、これはとにかくめでたいことだ。そう気持ちをすぐに切り替えて、こう提案する。


「なにか、お祝いしないとな!」


 大切な幼馴染の快挙なのだ。

 ここは、男としての甲斐性の見せ所だろう。



「え、えへへ……。うん、ありがと……」



 そう思って意気込んでいると、このはが恥ずかしそうにうつむいて頬を掻いた。

 とりあえず座ろう、ということでベッドに腰掛ける俺たち。



「なにか、欲しいものあるか?」

「欲しいもの、かぁ」

「何でもいいぞ? この機会に、思いっきり甘えてくれ」



 そして、向かい合いような感じで訊ねた。

 すると彼女はしばし考えて、



「あ、あの……!」



 少しだけモジモジしながら、こう口にする。




「私と一緒に、お買い物――行ってくれないかな?」




 上目遣いに。

 ひとかけらの勇気を振り絞った、そんな声で。



 

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