幼馴染はもふもふが大好き。
「ふむぅ……!」
「このはさん、やっぱり好きだよな。こういうの」
「うん、大好き!」
パフェをなんとか食べ終えて。
俺とこのはは、向かいのペットショップの前にいた。
案の定、彼女は子猫などの小さなもふもふに釘付けになっている。あまり推奨されることではないが、ガラス越しに子猫とハイタッチをして笑顔を浮かべていた。
なんとも微笑ましい光景。
俺は後ろから眺めて笑っている不審者になっていたが、それでも構わなかった。
そう思っていると、不意にこのはが寂し気にこう口にする。
「でも、わたしの家――ペット禁止だから」
「そっか。アパートだもんな」
「うん……」
しょんぼり。
肩を落とすこのは。
そういえば、そうだった。
彼女は母親との二人暮らしで、ペット禁止のアパートに住んでいる。そうなってくると子猫は彼女にとって、好きなのに手が届かない存在なのだ。
いまは楽し気に遊んでいるが、それって悲しいことなのではないか。
「ふむ……」
俺はそこまで考えて。
「あぁ、もしもし? ――母さん?」
おもむろに、スマホで母親に連絡を取った。
◆
「ふにゃぁん……」
「このは? あまり抱きしめると、モモも苦しいからな?」
そして、数日後のこと。
我が家には新しい家族が増えたのであった。
血統書付きはさすがに無理だったけれど、小さなミックスの子猫――モモが、このはの腕の中で喉を鳴らしている。
これは簡単な判断ではなかった。命を預かるのだから、責任を負う必要がある。いくら大切な女の子のためとはいえ、安易には決められなかった。
「ももちゃん、むぎゅぅ……」
それでも、俺は決断したのだ。
彼女にとって必要なことは、きっと俺にも必要なことだから。
母さんからは当面の小遣い停止を喰らったけど、これに関しては全然、痛くもかゆくもなかった。足りない分はアルバイトで稼げばいいのだから。
自分の高校が、バイトを許可しているところで本当に良かった。
「ごろにゃぁん」
そんなわけで、現在このははモモを抱きしめてベッドに転がっている。
蕩けた顔をして。キョロキョロと落ち着きのない家族を、優しく撫でるのだ。今まで我慢してきた分、それが爆発している。
俺はそれを見守って、静かに笑む。
緩やかに流れる時間の中で、楽し気な彼女を眺める。それは、至福の時。
「みゃあ」
そして最後に、少女の腕の中で短くモモが鳴くのだった。
目を細めて。このはに、頬をこすり付けながら。
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