幼馴染との甘々なひととき。
「ふわぁぁ!」
このは、満開の花を咲かせるの巻。
そんなわけで、俺たちは翌日の土曜にスイーツを食べにきた。
互いに私服なのだが、このはは清楚なワンピース姿。店の中に入ると、その裾をひらひらと舞わせながら周囲を見回していた。
最近できたばかりだという真新しい店舗の内装。そして、提供されるスイーツはどれも、一流のパティシエが作ったものばかりだという。
これを学生でも楽しめる金額で出しているのだから、大したものだった。
「ここ! かずま、ここ!!」
「はいはい。窓際の席が良いんだな?」
ショッピングモールの一角にあるこの店からは、ちょうどペットショップが見えていた。このはは昔から、もふもふとした生き物が大好きなのだ。
そんなわけだから、子犬や子猫を見ながら甘いものを食べられる。
この場所で過ごす時間は至福だろうと思った。
「で、どれが食べたいんだ?」
「これ!」
「そうか、これ――はい?」
「スペシャルビッグパフェ!!」
「………………」
このはさん? あなた、無垢な眼差しで凄いこと言ってるよ?
「えっと、高さ一メートルのビッグパフェ。ふんだんな生クリームとバニラにチョコ、甘々の極致をお楽しみください――ははは、すごいなぁ。これ」
「ね! 凄いでしょ!!」
「……うん」
いいや、ここで引き下がるのか橋本和真。
愛おしい女の子の笑顔を、悲しみに歪めることができるのか!?
それは――否! 俺は俺として、このはを愛でるのだと決めたのだ!!
「よし、頼もうか」
「うん!」
笑顔の裏では、戦場に赴く戦士の如く。
俺は覚悟を決めるのだった。
◆
「ん、思ったより食べやすいな」
「そうだね! わたしも、たくさん食べちゃう!」
クールな外見のこのは。
そんな彼女はいま、蕩けた顔でほっぺを押さえている。
かく言う俺も、思った以上にビッグパフェを食べられていた。これなら、完食も夢ではない。そう思って、ふっと息をついた時だった。
「ねぇ、和真?」
「ん、どうし――」
不意に、このはに声をかけられて。
「はい、あーんっ!」
生クリームをすくったスプーンを、差し出された。
その奥では彼女が優しく、目を細めている。
天使か、この子は……。
「(って、そうじゃねぇ!?)」
待て、落ち着くんだ。
これって、そういうことだよな。そう思い、硬直していると――。
「和真? やっぱり、嫌?」
このはが、寂し気にそう口にした。
「いただきます!!」
――その瞬間、俺はスプーンに食らいついた。
このはは驚いて目を丸くするが、直後に頬を赤らめる。そして、
「えへへ、ありがとう!」
そう、感謝の言葉を述べるのだった。
「い、いえ。どういたしまして……」
あぁ、本当に顔が熱い。
思わぬ形で訪れたその場所で。
俺たちは、互いにパフェを食べさせ合うのだった。
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