探索③ 扉の向こうの恐怖

【ダイスロール】

《紗儚|音の正体を見極める:達成値55》

《達成値55 → 45 失敗》

《識暉|音の正体を見極める:達成値40》

《達成値40 → 31 成功》


 その音を聞いて、識暉は言った。


「――ガムテープだ。内側から目張りされている」


 寮母の顔が歪む。

 どうして? そう書かれているようだった。


「普通じゃないわね。なんとしても開けて、中を確かめないと」


 その言葉に反応するように、寮母は強く扉を押した。

 粘着質な音がするだけで、扉は動かない。

 もう一度。それから、もう一度。

 扉は、開く様子はなかった。

 もう一度。その手を識暉が止めた。


「すみません、下がっててください」


 そう言って識暉は寮母の肩に手を置いた。そして、ゆっくり扉から離した。


「ちょっと、何をするの!」


 その言葉に識暉は短く「開けます」と答えた。

 扉に正対し肩の力を抜く。扉に視線を合わせて、静かに呼吸をした。

 瞬間。


【ダイスロール】

《識暉|古武道:達成値80》

《達成値80 → 16 成功》

《ダメージロール:2d6+2 → 3+5+2=10》

《扉:耐久値15 → 5》


 識暉の右足が弧を描き、扉にぶつけられる。

 けたたましい音と一緒に扉が大きくしなる。それでも開きはしなかった。

 そこに、次の一撃が加えられた。


【ダイスロール】

《識暉|古武道からの連撃:達成値70》

《達成値70 → 35 成功》

《ダメージロール:2d6+2 → 2+3+2=7》

《扉:耐久値05 → ー2》


 初撃の反動を右足から左足へ流す。その力に、地面を蹴る勢いをのせる。左足は綺麗な弧を描き、遠心力と共に扉へ叩きつけられた。

 その威力に、扉は弾けるような音を立てて目張りを引き剥がし開け放たれた。

 識暉の残心。必要であれば、まだまだ打ち込む気概。


 開かれた扉からは部屋の中の様子が見えた。

 真っ暗だ。

 待機灯の僅かな光さえ無い。手を引っ張られ、引きずり込まれそうな暗闇だった。

 廊下から差し込んだ光だけが、一筋の光になって部屋の中に延びている。その光の先に、蛍光灯のように青白く細いものが見えた。


【ダイスロール】

《紗儚|アイデア:達成値75》

《達成値75 → 30 成功》

《識暉|アイデア:達成値55》

《達成値55 → 25 成功》


 それが何かわかった。

 それは。

 足だ。人の足だった。

 青白いを通り越して本当に真っ白なその足は蝋人形のようで、まるで生を感じさせなかった。


【ダイスロール】

《紗儚|正気の蝕み:達成値75》

《達成値75 → 54 成功》

《識暉|正気の蝕み:達成値80》

《達成値80 → 71 成功》


 恐怖で呼吸が止まり、体が固まる。

 目を逸らしたいのに、それさえできない。

 動くことすらままならないこんな状況で、この暗闇の中に入っていける人なんて、いるわけがない。

 でも。


「大丈夫か!」


 識暉は別だ。

 何の躊躇いもなく、暗闇の中に飛び込んで行った。


「識暉!」


 私も識暉のあとを追って部屋の中に入った。暗くてよく分からないが、識暉がなにかを抱きかかえた。

 私は手探りで、扉の近くにあるはずの電気のスイッチを探した。

 見つけるのは簡単だった。ただ、ガムテープで執拗に固定されている。

 胸ポケットに差していた筆記用具をとりだし、スイッチに叩きつけ、電気をつけた。

 その光景に、思わず口を押さえた。

 そこに倒れていた輝梨は、思わず目を背けたくなる様な有様だった。

 肌は白く、小刻みに震えていて、口許からは「あ」とも「う」ともつかない声が、涎と一緒に流れている。

 寮母が部屋に入ってきた。輝梨を見た瞬間、後ずさり壁に背をぶつけた。そのままへたり込んでしまい、動けなくなってしまったようだった。

 そんな寮母の姿を見て、私は。


【ダイスロール】

《紗儚|アイデア:達成値75》

《達成値75 → 13 成功》

 

 急に冷静になった。

 だからこそ、これが絶好のチャンスだと気が付いた。



「樸生先生を呼んできてください」


 寮母に向かって言った。

 寮母は怯えた顔に「?」を浮かべながらこちらを見る。

 思考が止まった人間を動かすのは簡単だ。

 ただ、怒鳴れば良い。


「早く!」


 寮母は驚いたように跳び跳ね、部屋を出ていった。

 これで、邪魔者がいなくなった。

 ずっと声をかけ続けている識暉の隣に行く。識暉は私に気がつくと、目に涙を浮かべながら言った。


「輝梨の様子がおかしいんだ。全然返事をしない。オレ、どうしたら良い?」


 識暉は立派だ。

 こんな状況でも、混乱しながらも、輝梨を助けようとしている。

 でも、私は言わなきゃいけない。

 純粋な識暉の思いやりを、踏みにじらなければならない。

 心が痛む。でもいいんだ。


「  識暉」私は、そういう役割だ。

「無駄よ」識暉の目を見て、伝える。

「私たちにできることは、声をかけ続けることじゃない。輝梨さんがこうなった原因を。その手がかりを探すことよ」

「でも!」

「貴方が声をかけ続けたら、輝梨さんは良くなるの? そうじゃないことを、貴方はわかっているでしょ」

「  でも」


 涙目で訴えかける識暉の頬を手のひらで打った。


「貴方が腑抜けてどうするの! しっかりしなさい!」


 その声に、識暉は強く目をつむった。

 それから、輝梨を見て「ごめん」呟いた。

 識暉が立ち上がる。


「なにすれば良い?」

「何でも良いから、探して」

「わかった」


 そう言って、部屋のなかを探し始めた。


【ダイスロール】

《紗儚|幸運:達成値05》

《達成値05 → 32 失敗》

《識暉|幸運:達成値80》

《達成値80 → 16 成功》


 何を探せば良いのか、わかっていたわけではなかった。

 それでも、識暉はそれを見つけた。

 

 輝梨さんの残した情報。

 

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