改めて読みました。きちんと感想を書いておきたかったのでレビューの場をお借りします。
心を通わせてくれるアンドロイドという夢はSFにおいてある種定番のもので、この作品もその夢を叶えてくれるひとつの物語です。
「心を通わせてくれる」という状態を想像するとき、単純な肯定や共感がその主たるものとして思い浮かびます。もしかしたら「私」もそこまでの目的が達成されれば満足だと思っていたのではないでしょうか。
けれど「彼女」の中のひとつの言葉の解釈を知ったことをきっかけに二人の関係は「人間と、心を通わせてくれるアンドロイド」から「心を通わせ合う人間とアンドロイド」に変化したように思います。アンドロイドである「彼女」が「私」の心を本当に解して、「私」もまた「彼女」の心がより自由に育まれることを願って……深い愛情の交換がそこにはあって、作り物から生まれるものはすべて紛い物、という考えをずっとずっと超えている。ほんとうに愛しくて優しい物語でした。
読者の寂しさにもきっと寄り添ってくれるお話です。未読の方は冬の寒い夜のために、この物語の名前を覚えていてください。