第2話 パンツ覗き魔!
スカイブルーパンツの女子は、いや、この
たて続けに起きた出来事に対して、僕は、あっけにとられて、ぽかんと
しばらくして、ハッと気づく。
呆けている場合じゃなかった!
遅刻しかけているのである。僕は、慌てて立ち上がって、美少女の後を追って走った。
走りながら、僕は、美少女の発言について思い返していた。彼女の発した謎の呟き。
ラブコメっちゃった。
ゆっくりと脳内で再生してみても、やっぱり意味がわからない。確かにマンガのラブコメのような展開ではあった。曲がり角で、美少女とぶつかって、倒れて、パンチラなんて、典型的なラブコメ展開といえるのではないだろうか。
しかし、だからって、そんな
ぶつかって痛かったとか、パンツ見られて恥ずかしいとか、ちゃんと前見ろよとか、そういう反応だったらわかるのだけど。
「これが、高校クオリティなのかな」
……、いや、違うな。
どちらかというと、稀久保学園がおかしいのか、それか、あの美少女がおかしいと考えるのが妥当だろう。
いきなり、高校生活に不安の影が差したわけだけれども、僕は、その影を振り払うようにして走った。おかげといってはなんだが、なんとかチャイム前に校門に
「遅いじゃないか、いきなり遅刻かと思ったぞ」
担任の女教師は、そう言って、肩で息をする僕を
稀久保学園は美人を積極的に集めるように
一方で、タイトなスカートで身体のラインを
高校生に対して、そんなもの出してどうすんだ、もっと出すべき相手が他にいるんじゃないか、あぁ、いないから、こんなところで振りまいているのかなどと
「すいません、ちょっと来る途中でいろいろありまして」
「女か?」
「え?」
もしかして見ていた? まさか。
「いや、その、えっと」
「なるほど、当たりか。まったく入学早々」
「そ、そんな不純なことじゃありません! ちょっと不注意だったというか、まぁ、ある意味、ラッキーではありましたけど、いえ! チラッとしか見てません!」
「ふむふむ。正直な奴だな」
しまった、いらないことまで言ってしまった。
「別におまえを
「あ、でも、ぶつかったのは僕の不注意で」
「そうじゃない。おまえもおいおいわかると思うが、運がわるかった。そういうことだ」
「?」
どういう意味だろう。
ある意味、運はよかったのだけれど。いや、おそらく、菅田先生に言っていることはそういうことではない気がする。
もっと詳しく話を聞きたかったけれど、問い返す前に、菅田先生は教室へと足先を向けた。
いろいろと気になるところはあるわけだが、僕は気持ちを切り替えて、菅田先生の後を追った。
ついにクラスメイトと
彼らも入学して間もないはずだが、その彼らからしても僕は異質となる。溶け込むためには、
インパクトよりも、
とにかく悪目立ちしない。それが大事。
教室に入ると、クラスメイトは話すのをやめた。どうやらわりとまじめなクラスのようだ。それか、菅田先生がすごく怖いかのどちらかだろう。
僕が後を追って入ると、クラスメイトの視線が僕に集まった。こんな転校生のような紹介をされなくても、しれっと席につけばよかったのではないかと今更思ったけれど、こうなったのだから腹を
菅田先生のかるい紹介を受けて、僕は自らの名前を元気に述べようとした。
「「あ!」」
けれども、僕は、ある人に目を
僕と同時に声をあげたのは、今朝の美少女であった。彼女は、一番後ろの席に座っており、そして、目を丸くして、僕の方を指さしている。
「君は、今朝の……」
「パンツ覗き魔!」
え?
美少女の驚きの発言に、クラスメイトがざわめき出す。そりゃそうだろう。転校生さながらの登場をしてきた男子が、同じクラスの女子から、いきなり犯罪者呼ばわりされたのだから、事件である。
やばいやばいやばい!
なんとか誤解を
僕が慌てていると、美少女は、すっと指を降ろした。そして、驚いた顔を
「それじゃ、先生。私、もう戻ります」
「おう、急いでな」
美少女は、菅田先生に
え?
え? え?
僕は、混乱していた。おかしい。今、おかしいことが起きている。それは間違いない。何よりおかしいのは、このおかしい状況で、僕だけが混乱しているということだ。
他の生徒が、誰も不思議がっていない。
パンツ覗き魔と叫んだ美少女が、ただ叫んで、そして、教室から出て行ったことに、誰も疑問を持っていないである。
そんなことありえるのか?
「ほら、自己紹介の続きをしろ」
「あの子は」
自然と自己紹介の
「あの子は、どうして出ていったんですか?」
「ん?」
すると、菅田先生は、さも当然のごとく応えた。
「そりゃ、あいつは2年生だからな。自分のクラスに戻ったんだよ」
……もう意味がわからない。
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