『もしもし。もしもし。聴こえる?』


「え?」


『あ。これ俺の携帯端末で合ってるよね』


「なんで?」


『いやあ、まじで、ここどこだろって思って。まじで。溺れてた子供なんとか助けたんだけどさ、その後流されちゃって。よくわかんないところに流れ着いて、大変だった』


「なんでよ」


『いや、波がさ。こう、がばあって』


「いまどこ」


『最寄りの交番。めっちゃ流されたらしくてさ、ようやく人のいるところにたどりついたんだ。連絡とれなくてごめん。元気?』


「あなたは?」


『元気元気。水に流されたぐらいじゃ死なないよ。でも携帯端末家に置いてきちゃったのがさあ』


「あなた、忘れっぽいから。今から行くね」


『今からって、いま何時?』


「午前四時。まだ間に合うから」

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