番外 かつて優等生だった悪役令嬢の話

第1話 遠い昔になった過去



 絶望していた頃の事が、遠い昔のようだ。

 そう時間は経っていないはずなのに、もう何百年も経っているかのように思える。


 かつての私は、遥か彼方。


 この道は一方通行で、もう後ろに戻る事はできない。


 一時は、断罪されて命を落とすかもしれないと思っていた。

 けれど、命を落としそうになっていたそんな私のもとに、悪魔がやってきて契約をしないかと囁いた。


 それが全ての始まりだった。


 どうしてか、前世の記憶を取り戻した私は、本来の私とは違う道を歩む事になった。


 自由になった私は、悪魔と契約し、これまで私を蔑み陥れてきた者達を断罪していったのだった。


 死の間際、私を下に見ていた者達は、一体どんな気持ちだっただろう。


 罰が当たったのだと反省した?

 いいや、違う。


 なぜ自分がこんな目にあわなければならないのだと、ただ嘆き、憤るだけだった。


 あいつらは、自分がした行為が跳ね返ったのだという事を理解していなかった。


 ようするに私は復讐に失敗したのだ。


 やり直したい。


 そして、今度こそあいつらにその罪を自覚させて、私に頭を下げさせてやる。


 そのためには、準備が必要だ。


 一瞬で、何もかも望み通りに。

 なんて事はできない。


 いくら悪魔でも、出来ない事がたくさんある。


 恐ろしい悪魔として語り継がれてきた存在にも不可能があるのだというのは、少しおかしかったが。


 自由になった私は、悪魔の羽で飛び立った。

 

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