第20話 野村くんの威嚇。諒清はひるんで動けなかった。思ったより怖い。
体育の時間がやって来た。
本日の体育は3時間目に行われる。3クラス合同の男女別。授業内容は男子は体育館でバスケットボール、女子は校庭でサッカー。
軽い準備体操を行なった後、チーム分けをした。バスケ部、過去のバスケ経験者、それ以外の順でチームを分けていく。バスケ部でなくても、運動が得意でバスケがうまい人は所属する部にかかわらず、バスケ部員と同等の戦力として扱われることがある。
そんな中、僕は……当然のようにそれ以外としてチーム分けに貢献する。中学時代はサッカー部に所属していた僕だが、運動は得意ではない。
ではなぜ中学時代、サッカー部に所属していたかというと、
僕は中学だけでなく、高校も似たような理由で部活選択をした。僕が好きな子――
入学初日、校門前の桜並木に
元々僕は文科系の部活を希望していた。部活見学で各部活動を見て周っていた際、庭城さんは文芸部の部室にいた。
何度か足を運ぶと、幾度となく庭城さんは文芸部の部室にいる。それを見た僕は庭城さんは文芸部に入部するんだろうかと思った。その刹那、当時の部長から憶測が確信に変わる一言を頂いた。それは庭城さんがすでに入部を決めているという事実だった。
それで僕も文芸部に入部したというわけさ。今思えば、当時の部長は僕が庭城さんに好意を寄せていると勘づいていたのかもしれない。
好きな人がいるという不純な理由で部活選びをした、というのに…………僕が今、付き合っているのはその人ではない。どうしてこうなった。なにがいけなかった。出来ることなら、やり直したい。
そんなことを考えながら、
準備体操、パス&ドリブル&シュート、チーム分けを終え、試合が開始された。
試合は5対5で行われる。相手チームには川田さんの元カレ――
親友たる盛快とは別チームとなってしまったことが心細い。
チーム編成は先生が適当に生徒を並ばせて決めているため、生徒の意思だけではどうしようもできない。
序盤は運動得意組でパスを回して、苦手組は
味方ゴールと相手ゴールをだいたい3往復程した頃だろうか。ただ立っているだけだと、仲間はずれな気がして
そこで、なんとなく僕はパスを受け取る時のように両手を前に出す。その刹那、ボールが僕の方に飛んできた。どうやら、相手チームがゴールを決めたあと、自陣ゴール下からのパスを僕に繰り出したようだ。ボールが迫ってくる。
僕が運動を苦手とすることを知ってる人はもちろんいる。対して、知らない人もまた
ヘイ! パス! のポーズをとった罰だと諦めて、そのパスを受け取ってやろうではないかと思った瞬間。相手チームにパスカットされた。そのまま、シュートを決められる。それは見事なシュートだった。心の中で「ナイス! シュート!」と叫ぶ。彼はバスケ部なのだろう。元カレと仲が良さそうに試合中であってもふざけあう姿をみる。
パスカットされたことで僕の手にボールが渡らなかったという安堵。運動が苦手なせいで点数を取られてしまったという罪悪感。
そんなことから、今度はちゃんとパスを貰いにいこうと決心する。
僕だって、中学時代はサッカーをしていたんだ。パスを貰うこと自体は造作もない。運動が苦手とは言え、3年間もやっていれば当然だ。
ゴール下の味方がパスする準備を整えたところで、相手チームにパスカットされないよう、かつ味方がパスを出しやすいであろう位置に素早く移動する。
それはもう…………『ゴキブリ』のような俊敏さを持って!
難なく今回はパスを受けとることができた。
間髪いれずに、相手ゴールへとドリブルでひた走—―――れなかった。
僕の手からポロリと落ちたボールは、僕の足に当たる。コロコロと無防備に転がるボールをわたわたと必死に追いかけ行く。
何人も触れられず自由に解き放たれたボールを、誰も拾わないのは優しさかな? ……と思ったら相手選手に拾われて呆気なくゴールを決められてしまう。
「ちゃんとやれよ!」
味方チームから罵声という名の音波で、僕の心を攻撃してくる。それを真っ向から受けた僕は怯んで、反論できずにいた。
これがポケ○ンで僕がモン○ターだったら、ト○ーナーから「使えねぇ」なんて言われて未来永劫、共に旅ができなくなるところだろう。敵に技を当てられないモン○ターはいらないもんね。
攻撃のターンをふいにしてしまった僕を優しく
「そんなこと言うのは
爽やかなイケメンフェイス&イケメンボイスで、僕を
思わず懐きそうになる僕。その対応になんだ彼はちゃんと僕に優しいじゃないかと最近睨まれていると感じていたのは気のせいだと安堵した――――のは一瞬。
僕がお礼を言おうと思いつつも尻込みしている間に、なぜか野村くんは僕に近づいてくる。罵声を浴びせてきた彼がチェッと回れ右したタイミングで、僕の左耳に野村くんは口をグイッと近づけて来て…………
「真面目にやれよ」
それは僕にしか聞こえない程に小さな声だった。
恐怖で身震いを起こす僕。結局、僕はチームに
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