第3話同じ人間

 改めて冷静になり、彼女を観察する。今まで柏木のことなんてただのいちクラスメイトぐらいにしか思ってなかったから、顔などしっかりと見たことがなかった。

 まず顔。目元まで隠れた長い前髪に、ワカメの如くうねうねした手入れされていない長い髪の毛。鼻筋はしっかりと通っていて、口もぷっくらとしている。こうみると柏木は結構顔が整っている。

 ただこの髪型のせいで全部台無しになっているという感じだ。もっと身なりを手入れすれば、彼女はモテるようになると思う。

 まじまじと柏木を見続けていると。


「あの……私の顔がどうかした?」


 あまり長いこと見られ続けられるのに恥ずかしくなったのか、柏木は恥ずかしそうに顔をそらす。


「い、いやその……僕彼女とかできたことなかったから、本当に彼女ができたんだっていう実感がいまだにまだわかなくてさ」


 はははっと乾いた笑い声を出しながら、僕はそんなことを言う。でも本当に僕なんかに念願の彼女ができたのか……。でも彼女ができたぐらいで何か僕の人生が変わるのか?

 これが柏木ではなく、僕の好きなあの人ならば……。

 そんな最低なことを考えてしまう。


「ねぇ、沢木くん。その……早速だけどその……この後デートしない?」


「え?」


 柏木にそんなことを言われ、びっくりする。デートか……。まあ恋人同士なら普通するよな……。


「いや……?」


 不安そうに見つめてくる柏木を見て、多少の罪悪感を抱く。


「いや全然! むしろ僕が誘おうかなって思ってたし」


「本当!? じゃ、じゃあその……行こ」


「うん」


 こうして晴れて恋人同士になった僕たちは、初めてのデートに行くことになった。僕はどこに連れていかれるかわからないまま、ただ柏木の後をついて行った。

 その間に雑談の話題として僕の気になっていたことを質問する。


「その……柏木さんはなんで僕なんか好きになったの?」


 告白されてから気になっていた質問をする。柏木は少し恥ずかしそうにするが、それでも答えてくれた。


「その、はっきりと言葉にしずらいんだけど……強いて言うなら似てた? からかな」


 本人の頭にも疑問符が浮かび上がるように回答だった。似てる……とは? 

 彼女と僕が友達もいないと言うことだろうか? それとも暗い奴同士と言うことか? まあ彼女と僕には少なからず共通する点がいくつかあるが、それが好きになった理由になるのだろうか?

 

「人間って自分の持ってないものを持ってる人に惹かれるってよく聞くけど、柏木さんは反対だね」


「うん。でも自分に持ってないものを持っている人と一緒にいるより、自分と同じ価値観や感性を持っている人といる方がよっぽど楽しくない?」

 

 ニカッと笑みを浮かべて柏木芽衣めいは笑った。その日僕は初めて彼女の笑顔を見た。明るくて眩しい笑顔だ。そんな顔を不意に見せられ、僕の心臓はぎゅっと痛んだ。






























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