第十三話
俺が敵対している村についたのはすぐだった。村に着くと入り口には村長らしい人がいた。
「あの、すみません。」
村長は黙ってこっちを見ている。なにも言わず、ただこちらを眺めるのみ。
……あやしい。何かが怪しかった。普通であればそこに人がいるのだからどうしたのか聞いてくるのが普通だ。黙ってなにもしないというのはおかしい。
……間違いない。敵の策だ。こいつらは、俺が敵対している村から来たことを知っている。どういう経緯でそれを知ったかは分からないが、こいつらは知っている。
であればこいつらがすることはひとつ───
わかっていながらも尚、俺は執拗に話しかける。
「すみません……」
返事はない。
「あの、すみません。お聞きしたいことがあるのですが。」
「なにこのじぃさん。耳聞こえないんじゃないのー。あのー! 聞こえてますかー!」
なにもわかってないルーシャを見るのは些か滑稽だった。
「すみませんって言ってんじゃん」
ルーシャが一歩前に出る。
「聞こえない?」
二歩……三歩……四歩。滑稽が恐怖へとかわる。まずい、このままでは。まずい────
「ルーシャっ! そこからっ……」
そう言った刹那。村長は爆発した。いや正しくは人形。
ルーシャは三歩程後退する。大丈夫、致命的な怪我ではない。
────爆発で舞い上がった砂埃や煙の中、気配を感じる。
囲まれた────
そう確信した時、俺の目を矢が掠めた。
その矢は燃えている。能力持ちだ。
なに、大したことではない。
《スタンダードスキル》
この世界の大多数の者が所持する能力。
「火 水 風 地 空」五大元素を基につくられた能力。
なるほど、ありきたりなものとはいえ、多勢に無勢であれば厄介極まりない。
しきりに矢が注がれる。
あまりに多い。
すべてを見切る。
弾き、回避する。
人数は……100余りか……いける。
砂埃が舞台から退けば俺は咄嗟に発動した。
「
────響く。快晴の下に俺は吼えた。その猛獣の吼えたのに敵は次々に倒れていく。生命エネルギーを奪い取り、力にする。身体のパンクしない程度に周囲の生命エネルギーを力に変換する。全ては消費せず、後に返還する。故に死者は出さない。
力が漲る。まだいける筈だ。構わず取り込む。
……全員は無理か。ならあとはこの力を使用するのみだ。あと、敵は半数前後。
右手にはナイフ。
力を込める。
一歩前に。相手は数十人、こちらは一人。槍が振り落とされる。それを躱してナイフを前方へ刺突した。ナイフの切っ先を少しずらして相手脇腹少し横の虚空に風を作る。相手は意識を失った。先ずは一人。双方から炎。
地を強く踏み空へ向かって跳躍する。身を鳥のように回転させ頭を地に向け、空に立つ。右側の相手にナイフを投擲し、それが胸に突き刺さったのを確認。
安心しろ、致命傷じゃない。
着地する。
この間わずか二秒弱。すぐさま左側の敵に近づき、相手の動きを固める。
次はどこだ。
後ろからくる水流を躱す。胸に突き刺さっているナイフを手に取り体勢を整える。
「一気に行くぞっ!!」
駆け抜けていく。
倒す。倒す。倒す。
躱す。躱す。躱す。
火も、水も、風も、地も、空も。
残りは数人。敵意を向け続けている。
ならするべきことは変わらない。
「────!!」
「そこまでよ!」
聴き慣れた声が、終わりを告げた。
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