第十話
村長の話を聞き終えて、俺はルーシャに小声で尋ねた。
「お前、どう思う?」
俺がそう言うと、ルーシャは少し逡巡してから答えた。
「何かの能力かも……系統は
「
「そうなんだよねぇ……」
気になることは沢山あるが、しかし、このまま考えても埒が開かないので「まぁ、後でゆっくり考えようぜ」とルーシャに言って、この話は畳むことにした。
俺は話を終えてから、少し頭を掻いて、村長に向かって言った。
「分かりました。最善を尽くさせて頂きます。この家の見取り図などはありますか?」
「見取り図……ですか……いえ、見取り図はないですが、ある程度なら図に描けるのでそれでよろしいですか?」
「はい、構いません」
俺がそう言うと、村長は図を描くために一旦家に戻って行った。
村長が図を描いているのを待つ間、一つ気になっていたことをルーシャに聞いた。
「……家の扉が開いた時、なんであんなに表情が強ばっていたんだ?」
ルーシャは途端に表情を曇らせて、しばらく間を開けてから口を開いた。
「気付いてたの……」
「まぁ、これでもお前の契約者だからな」
俺の言葉を聞いてから、ルーシャは大きな溜息をついて髪を少し触ってから「そう、気付いてたなら隠す訳にはいかないわね」と明るく言った。
「さっき、あの扉が開いた瞬間に、中から何か深い闇のような空気が漏れてきたの。その空気はあまりにも暗くて、重たくて、しんどくて、アタシは何とも言えない不快な気分になった」
ルーシャがそう言うので、俺は扉が開いた瞬間を思い出した、しかし……
「俺はそんなの全く感じなかったけど……」
「そう、そこなの。精霊であるアタシには気付けて、人間のななしと村長は全く気付かなかった。これってどう言う意味があるのかしらね?」
……人間には感知出来ない存在が、関与している…?おいおい、それってかなりヤバい状況なんじゃないのか…もし、アレが関わっているのだとすればヤバいなんてレベルの話じゃないぞ。
「まさか、アレが今回の件には関わっているのかも知れないのか? それも人間には感知出来ないなんて、相当に長い間、肉体を持って存在していることになるぞ……」
「だから、それ相応の覚悟が必要かも知れないわよ、この案件」
報告がめんどくさいなんて言ってられなくなって来たな。下手をすればこの国が大きく傾くかも知れない。どうしたもんかなぁ、これ。考えただけでも胃と頭が痛くなってくるぜ……。
洒落にならない程の可能性に、頭を抱えていると、村長が戻って来た。
「ななしさん、これがこの家の内部の図です。どうぞお使いください」
「ありがとうございます、村長。今から私たちは中に入りますが、念の為、村人の方々をこの家から離れさせておいてください」
「わ……分かりました。では、お願いいたします」
村長がそう言ってから、俺とルーシャは家の中へ入って行った。
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