第八話
朝になり俺は目を覚ました。日はまだ完全に昇りきっていないようだ、外が少し暗い。横を見ると、ルーシャは目を腫らして、布団も被らずに床で眠っていた。不貞寝したのかよ。風邪を引かないようにと、俺はルーシャに毛布をかけておいた。
俺はルーシャが眠っている内に、今日の調査の準備をすることにした。荷物から必要になるであろう道具を取り出す。まぁ、元々の目的は調査ではないので大したモノは入っていないだろう……と思ったのだが、荷物から出て来るのは……
「ナイフと銃と各種武装類に、土質検査キットと水質検査キット、
……武器類はともかく、なんで検査キットと検知器がここに入ってるんだろう。少なくとも俺はこんなもん入れてねぇぞ。取り敢えずルーシャが起きたら尋ねよう。
さて、と。一通りの準備を終えて外を見ると、日は高く昇り、明るい光が窓から射し込んでいた。二度寝をしようと思っていたのだが、これほどに明るくなってしまっては流石に寝れまい。ルーシャが起きるまでどうやって時間を潰したものか。全く、やることがないと言うのは、本当に退屈である。俺がそんなことを考えていると、
「……ん……ななし、おはよう……」
どうやらルーシャは目を覚ましたようだった。
「おはようルーシャ」
俺がそう言うと、ルーシャは頷いて、のろのろと起き上がり、そして、大きな欠伸をしてから「まだ眠い……」と言った。見た目は完全に寝起きの子どもである。
「二度寝なんてさせねぇよ。ほら、飯食いに行くぞ」
「ご飯……? やったぁ……zzz」
ルーシャは立ったまま眠ろうとしていた。
「寝るんじゃねぇ」
この宿では食事は食堂でしか食べることが出来ないらしい。俺たちは食堂に近い部屋を取らせて貰ったので、大した移動は必要ない。時間的にもまだ混み合うようなことは無いので、優雅に朝食を摂れる。
食堂に到着すると、中央の方にあるカウンターに行き、俺とルーシャは賄いさんから朝の定食を受け取り、適当な席につく。
「いただきま〜す」
席についてすぐ、ルーシャはそう言い切る前に飯を食い始めた。どんだけ腹減ってるんだよ。俺は飯を食う前にルーシャに尋ねた。
「ルーシャ、なぜか今回の仕事の荷物に検査キットと検知器が入っていたんだが、お前なんか知らない?」
俺がそう言うと、ルーシャは口に大量に含んだ食事を飲み込んで「え? 知らない」と言った。ルーシャじゃないのか、あれ。
「でも良かったじゃん、地道に原因を探す手間が少し省けたんだし」
「ま、そう言うことにしとくか」
そう言って、俺も飯を食おうとした時だった。食堂に血相を変えた村長が駆け込んで来たのだ。そして大きな声で「な……ななしさんはここに居られますか?!」と言った。
俺は名前(と言うかあだ名)を呼ばれ、「はい。ここに居ますが……」と、手を挙げて返事をした。
「な、ななしさん……少し来て頂けるでしょうか?」
村長は息も整わない内に尋ねた。どうやら何かがあったらしい、俺とルーシャは顔を見合わせた。俺は頷いて、村長の言葉に従う。ルーシャも俺に付いてくるようだった。
村長に案内され、俺たちは一つの家に到着した。特に目立った部分も見当たらない、普通の家と言った感じなのだが、村長からは何かただならない雰囲気が流れている。
「何があったか、分かるか?」
俺は小声でルーシャに尋ねたが「特に何も感じないわね……」と返って来ただけだった。
俺たちがそうしていると、村長は取手に手を掛けて扉を開けていた。
「この中なのですが……」
「中に入る前に、何があったのか教えて貰えますか?まだ何が起きているのか把握出来ていないので」
「あ……ああそうでしたね……あまりの 出来事に気が動転していたもので……」
村長はそう言うと、今に至るまでのことを語り始めた。その時、俺は尻目にルーシャを見たのだが、ルーシャの表情は酷く強ばっていた。
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