最初の仕事。

第2話 それは看過できない衝撃の事実。

 気が付いたら目の前に、胡散臭い黒スーツの男が立っていた。

 冥界日本支部 死神局 幽霊部 成仏課 人間係 シニー・ガミと名乗ったその男は、私が死んでいて、未練がある為成仏できない幽霊だと言った。

 記憶がなく、自分が何者で、何故死んだのかがわからない私。それでも、無意識に人を助けたいと思っていることだけはわかっていた。

 幽霊では人を直接助けることはできない。そう言われた私に与えられた措置は、同じように迷っている幽霊を救うことだった……。


「と、いうことで早速お仕事を始めましょう。レイさん」

 シニーは、どこからともなくでかい鞄を取り出して、その中から一枚紙を取り出した。

「対象者は、田中正さん。享年九十七歳。大往生ですね」

 シニーの後に続いて、私は進む。

「生前暮らしてらっしゃった家から動けなくなっている、と」

 昼間の街中。往来の人々の少し上を、ふよふよと浮きながら目的地へと向かう。

「何か質問はありますか?」

「質問、っていうか……」

 死んだ実感もないまま、流れるように役職を与えられた。シニーと揃いのスーツを着て、名刺ももらった。

 役職は、冥界日本支部 死神局 幽霊部 成仏課 人間係 特別相談役。

「何もかもわからないことだらけだし……」

 でも、私は後ろ向きなわけではなかった。人を助けることが、私の記憶と成仏に繋がる、と信じて。出来ることがあるなら、やってみよう、とは思っている。

「その息です」

 シニーがナチュラルに心を読んできた。にこやかなスマイルだが、心を読まれている方としては何も面白くない。

「心読むのやめようよ。ねぇ」

「まぁ、私としてもそうしたいのは山々なのですが……。正確には心を読んでいるのではなく、レイさんの心の声が私の頭に流れ込んできている感じなんですよ」

「えっ」

 絶句してしまう。

「要するに、心の中身が垂れ流しになっているってことですね」

 にこやかな笑顔でとんでもない事実を知ってしまった。

「え? え? それはどうにかならないの?」

「あ、見えてきましたよ。田中さん宅です」

「おい!」

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