【第壱章】ホラ吹き馬鹿野郎
【第壱話】3回目のアラームで、ようやく起き上がれた朝。
俺は、雑妙に長い夢を見ていた気がする。嗚呼、多分記憶をなくした直前の出来事。それは4年前の出来事。
――ピピピピ……ピピピピ
愚図をこね、
ゼエゼエと息を切らしながら走ったおかげでぎりぎり間に合ったと思う。「セーフ!」と言いながら扉を開けて店内に飛び込む。
「セーフじゃねーよ!3分アウトだわ!てめーは時間にルーズだからいつまでたっても恋愛のルーザーなんだよ!」
ガタガタと貧乏ゆすりをしながら
「お前が言うな!確かに俺は毎日のように仕事の時間に遅れるが一度も仕事を失敗したことはないし途中に投げ出したこともないうえにお前より俺のほうがつえーしファッションセンスいいし……いいのか?……後……あれだ、そう!俺は誰が何と言おうと陽キャだ!童貞も卒業してるわ!」
――これは我ながらダサい……少し口を慎もうか。
「童卒って言っても風俗じゃん。」
「はぁ……くだらねぇ。」
村上が鼻でせせら笑う。
「痛いとこつきやがって、はいそうです。風俗ですよ。」
口をとんがらせ屁理屈を吐き捨て、缶コーヒーを流し込む。膳所と村上は決して排他的関係ではない、このどんぐりの背比べは殆ど朝の恒例行事になりつつある。
定員さんも他の常連客も最初は驚いたり、笑ったり、迷惑そうにしていたが、今は皆目の前の料理に食らいつき俺たちに目もくれない。俺は苦笑いをして、ため息をこぼす。
狐耳の女の子、
「鯨井ちゃん、膳所のことを見て怖がって逃げてったで。」
頬杖をつき、村上はニヤニヤしながら言う。
「それは多分違うな、俺に惚れてるから恥ずかしくなって逃げたんだよ。」
俺も真似して頬杖をつきながら、ニヤニヤ言う。
「ったく、膳所はいつになってもポジティブやな。」
その発言に対して、「そうでもないさ。」と冗談めかしに返答した。
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