【第弐話】Preparing to kill bad

 腹が満たされた事でやっとこさ話の本題に入れそうだ。


「よし!それじゃ!今回の代行はこちら!」


 そう言ってまだ封の切っていない封筒を、村上むらかみはサイドに置いてあるピンバッジとキーホルダーがひしめき合ったリュックサックから取り出す。乱雑に封筒を開け、中の紙を見た瞬間、落胆し、ため息をこぼした。そして嫌そうにのろりと口を開いた。


「……チンピラ狩り。」


 続けて俺も気分が落ち込んだ。この仕事は腐るほどやったことがあるからだ。正直   弱いやつ相手に一方的な暴力はしたくない。どうせならwinwinな関係で戦いたい。トホホ……。

 ここ最近、魔法手術にかかる料金が、安全性の向上と共に比例している。その為、魔法使いになろうとしようとしてもなれず、年々失業者は増え続け(魔法使いの人達の方が給料が高いし、雇ってもらえるから。)、失業者同士がピラミッド型に強盗グループを形成し始め、死体処理屋や納棺師などの人の死に関わる仕事をする人たちが儲かる始末だ。 

 外から、大音量のメガホンで「人類尊厳維持局は!魔法使いは人じゃないをモットーにし!人類の救済をするため!魔法使いしか入れないような区をひとつづつ潰すことを誓います!」と、超タイムリーな感じで、問題の発端が近くを車で通り過ぎて行った。


「またかいな。喧嘩屋が喧嘩しなくてどうするってんだよ……ったく。これだから自堕落な奴は気が楽でいいこっちゃなぁ……膳所ぜぜさんよぉ。」


「まだ根に持ってんのかよ。ごめんて。」


「……まあ、仕方ないな。」

 取り敢えず平謝りする。勿論本気ではない。机に置かれたくしゃくしゃの封筒から、お札がひょっこりと顔を出していた。それを抜き取り、取り敢えず同じ枚数になるように分配した。カウンターでせっせと皿を回収している鯨井を呼び会計分と分のお金を渡す。


「いつものお願い。」


 俺がそう言うと、鯨井が台所横の休憩スペースに俺たちを手招きし、輪になるように勢員手を繋いだ。



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