【削除予定クエスト】一人のクエスト承諾者

ムギゴロウ

第1話 木の実

国から外に出ようとしている男がいる。それが俺だ。別に追放されたわけではない。クエストに行くだけだ。それも削除予定のクエストを。


門を通り過ぎたタイミングで門番に

「お気をつけて」と声をかけられた。

特に後ろを振り返ったりせずに歩き続けた。


今日のクエストは木の実と勇者たちが回収しなかったゴブリンたちの剣を拾いに行く。洞窟の近くに木の実がなる木があるからクエストを二つ受けることにした。


洞窟に到着すると一人の女の子が木にもたれかかっている。近くまで歩いていくと、その女の子が俺に気づき元気よく声をかけてきた。


「サナハじゃない!こんにちは。今日もクエストを?」


そこにいたのは小さい頃からよく遊んでいたミネラだった。


「ああ、木の実と剣を回収にな。」


俺は話したまま視線を下にずらした。彼女は木の実を使ってサンドイッチを作っているじゃないか。

あれがまたうまいんだよな、と見ていると彼女が


「サナハもいる?これ好物だったよね?」


俺を気遣って彼女がサンドイッチを渡してくる。


「いや、悪い。さっきご飯食ったばっかで入らないわ」


せっかく渡してくれたのに申し訳ない。


「謝ることじゃないよ(笑)私もお腹いっぱいになっちゃったから持って帰って夕食にでも食べましょう」


そう言うと彼女は立ち上がりサンドイッチが入っているバスケットの中身を見せてくる。


「はい、木の実、これで足りるかな?数はあると思うんだけど」


バスケットの中には充分すぎるほどの木の実が入っていた。


「助かる。ありがとな」


礼を言い終わると彼女はにっこり笑って


「どういたしまして!」


と返答をした。


「あとは剣だけなんだけれどミネラも一緒に来る?」


彼女を誘うと


「うん!」


と同じタイミングで首を縦に振っていた。

そのままミネラと一緒に洞窟へと歩き出した。


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