『楽園の果実』完結しました。感謝の舞

 翌朝、シレアの王城に一羽の鳩が降り立った。足に結えた紐には、ユークレースの国章が刻印された羊皮紙。王子王女に渡すよう言い渡され、受け取ったのは下男の青年である。


 執務室に着くと、いつもながら王子はさっさと仕事を始めており、王女は午前の講義のためいなかった。今回、ユークレースとの間のやりとりは、妹王女が主だって進めることになっている。従って兄のカエルムは、他の会議書やら城下の役所からの報告やら他州の調書やらに目を通しながら、聞いているから読んでくれ、と下男に頼んだ。

 どうやらユークレースには随分と入国者数が多いらしく、外向けにも頻繁に紹介されているらしい。非常に喜ばしいことである。言われる通りに読み上げる途中で下男も喜色を露わにした。昨今、大事業がひと段落したためだろう。それまでリアの王族近辺には大事が多かったというので、こうして外からの応援・評価があるというのは実に喜ばしい。


 こちらも嬉しくなる知らせが続く中、下男は突然、読み上げるのを止めた。


「どうした」

「……すごい評判のが向こうにいるみたいです」


 それは相当にいいことなのでは、とカエルムは聞き返したが、「どうしよう、ロスさんが負けてる」、と下男は焦っていた。


「いえ、ユークレースの王女付きがですね、『イケメン従者』って呼ばれてるんですよ。かっこいいだのイケメンだの言われてるんですよ。しかも強い。うちじゃ殿下とロスさん足さないと『イケメン』も『従者』も揃わないのに」

「いや別に私はどうか知らないが……ロスも相当できるが?」


 歩くイケメンカエルムは苦笑するが、それに対してシードゥスは必死で抗議する。


「従者の立ち位置でイケメンなのと主人の立ち位置でそうなのとは話が違うんですよ!」


 下男も随分、ロスに懐いたようだが、恐らくロス本人が聞いたら「イケメンとか言われなくていい」と言い返しそうな発言である。

 いずれにせよそうした評価を得る臣下がいるというのは国としても誇らしいところだろう。


 ***


 またどうでもいいスピンオフで始めてしまいました。「イケメン」なんて本編では絶対に出ない言葉まで使って(苦笑)。


 ともかく! 『楽園の果実』完結しました。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894170460

 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。見返したら、昨年の『天空の標』より長くなっていました。あとがきを入れずに17万字ほどでしょうか。


 最後まで追って読んでくださった方、レビュー、お星様、コメントをくださった方、そしてまだ読み途中の方も、みなさまにお礼申し上げます。

 コメントのお返し、遅れておりますが一つ一つに参ります。コメント大好きでとても嬉しく拝読しています。仕事でうやーん、となっていても一気に笑顔になりますね。


 途中、クエルがとにかく格好いい、イケメンだと言われておりまして、照れます。レビューにおいても然り。その嬉しさ余ってのスピンオフです。ネタにしてしまいましたが、感謝と嬉しさでいっぱいです。やったねクエル。

 クエルクスが主役ばりになりましたね、特に後編。



 ちょっとネタバレギリギリな点ですが……。

 この人は設定として序盤で「ユークレース一、二を争う剣技を持つ」と書いてしまったがために……

 パニアを過ぎたあたりで、「あれ? あまり剣で人間相手に戦ってないぞ?」となり、「夜の剣戟」の章で元の案以上の動きをしてもらいました。当初設定してしまったが故に入れる羽目になった殺陣でした。



 もう本当にありがとうございます。作者本人は「うーん、大丈夫かなこのお話」と不安でしたので、いただいたコメントやレビューに驚きまくっています。ありがとうございますと何度言えば良いのやら、足りません。


 また去年みたいに人気投票もしてみたいとか思ってしまったり。


「一気読み」おすすめというご評価も。感謝。


 ***


「そういえば、殿下は今回は全く関わらないつもりですか?」


 カエルムは昨年とは異なり、妹に大体は任せて別の仕事にかかっている。それでいいのだろうかと不安になって、下男は尋ねた。


「どうだろうな。少しは手伝うかな、最終確認とか」

「ああ、昨年あんた自分に『あとはよろしく』とか言いおいて丸投げしましたしね」


 下男が振り向くと、入り口にロスが立っていた。この兄妹の発言はよく似ている。妹もどこぞで誰かに言っていることだろう。


 ***


 さて、まだまだカクコンは二週間以上あります。

 カエルム妹編(本来はこっちが先なんですけど)『時の迷い路』はまだ連載中です。兄も妹も、ともにそれぞれの話で「あとはよろしく」と言っておりますね。


 こちらも頑張って、ここから佳境に入っていきますよ! 後半で加速するのが私の長編らしいです。


 兄さんはちろっと(ちろっとレベルだろうか)出てきます。


『時の迷い路』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054889868322


 こちらも読んでいただけたら、とても嬉しいです。


 最後に改めて、完結までありがとうございました! 皆様のおかげです、本当に。

 エッセイはまだ続く・・・。

 

 私も他の方のを読みたいのがたまっております。昨年みたいに他薦もできるくらい読みたいです。

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