戦略などない
空高くに光る白銀の月と眩い星々が天を彩り、その下で浜に寄せる波が静寂の中に潮騒を響かせる。大陸の先端に位置するユークレースの王都、リアの夜である。王城から見下ろせるところに位置するこの海には、停泊する漁業船もない。月明かりと城を囲む外壁の照明が海面に映しだされ、波の飛沫が美しく光った。
他には誰もおらず、夜釣りの船すら出ていない。そんな中、ランプを置いて桟橋に座る人影があった。若い娘である。裸足を水の方へ投げ出して時折揺らしながら、幾重にも折られた書に視線を落としている。
「ラピス」
「きゃっ」
気配を感じさせずに近づいたのは、娘と同じくらいの年頃の青年だった。夜闇に紛れる漆黒の髪と白い肌。そして黒鳶色の瞳がラピスと呼ばれた娘を呆れ顔で見ていた。
「またこんなところで。付き人の僕には言ってから出てください。それ、手紙ですか」
「仕方ないじゃない? 伝書鳩が来たのに気がついたのだもの。外に出たら海まで行きたくなってしまって」
「伝書鳩というからにはシレアから?」
「さすがクエルクスね。シレア王女から、例の件での報せよ」
クエルクスは主人がめくる書をみとめ、合点した。確かに王女の印の紅葉色の組紐。しかし、着くのが遅すぎる。
「こうまで遅れるなんて、何か途中で事故でもあったのでしょうか」
「いえ、計画性に欠けていたとお詫びの言葉があるわね。せっかくの催し物なのに」
「やる気あるのでしょうか」
「んー……向こうの担当官が空回っているみたい」
興味深そうに手紙をめくっていくラピスを見ながら、クエルクスは正直、不安になる。ラピスも存外抜けているのだ。初めて国際的な催しを任されて、ヘマをしなければいいのだが……。
***
さあユークレースにやってきました。『楽園の果実』の方の「初めの」舞台です。というのはこの話は旅に出ますから、リアからさっさと出ちゃうのですよね。色々な土地を描くことになると言っても、イメージ的には小国が集まっている感じの土地なので、そこまで風土も変わりません。
さて進捗。今日は仕事の方も少し余裕があったので、エッセイ・体験記投稿が多くなりました。本編はというと、「楽園」は、頭の中で今書いているところの登場人物の動きや場面になっている建物の構造をシュミレーション(意識的にではなく勝手になされる)。建物構造は割とよく考える傾向にあります。あっちに誰それの部屋があってそこから廊下で大体このくらいの幅で、ここまでくると開けて、そして玄関前に何と何があって……という感じ。
今書いているところ、またアクションなのです。苦手なのに。クエルクス剣の使い手にしちゃったばっかりに。そんな狭いところで剣振えないや移動しようって。詳しくは本編でどうぞ。
あとは、「時〜」の方にテコ入れをしていました。いくら読み返しても書き替えたくなりますね! 変えたくないところは変えないのですけれど! 表現は無尽蔵。
***
さて、タイトルの「戦略などない」は、戦略を立てられていない、という意味でもあり、戦略はほぼ立てない、の意味でもあります。前者はもはやアップのタイミングとかで既述の通りです。更新タイミングもバラバラです。◯時「八分」だけ合わせています。末広がりのはち。読みにくいって。統一できるようになったらやったほうがいいっていうのがセオリーですよね。
あと、宣伝も下手です自分。ツイッターで公開お知らせはしますけれど、魅力的に聞こえるようにって下手だな〜って。
もう一つは、今回は自主企画には参加しません。自主企画、効果的だと聞くけれど、余裕ナッシングです。心ギリギリ精一杯です(このネタがわかる人、白泉社コミックス読みましたね?)。
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コンテストが始まって一週間。新作として出していない二つの長編がどう動くか、観察しています。
『楽園の果実』は、「書き出しツイート」にも参加したおかげか、ユークレースへの入国者の皆様が割と多くいらしたのです。当初30人ほどだったフォロワーさんは40人に。各話、開示とともに追ってきていただいています。ありがとうございます。本編ではそろそろリアを出ます。
一方、『時の迷い路』は6日遅れの開示、フォロワーさんは+1(あいるさんありがとうございます!)。こちらの旧作は、失敗。完結済みをマイナーチェンジしながら再公開という形を取っているので、初めに間違えて「完結済み」表示のまま公開しちゃったのですよね。それもあってか、PVとフォロワさんは伸びず。
『天空』の時とはスタートに大きな差がありますが、まあ私の中で歴史の古い話だから仕方ないのかな、と思いつつ。読者選考のカクコンは厳しいとわかりながら参加したわけですし。「天空」の謎はこっちで解決しているので、兄があとなのですけどね。やっぱり殿下の方が
しかしぜひ皆様、王女の待つシレアにもごゆるりと。料理長のスープあります。
私の長編は皆、一度封じて新作として改稿、コンテスト参加、になってしまっています。一回で書け、と反省ばかりになっちゃうけど。
『時の迷い路』も、カクコン無理だったらネックになるところを改稿として『新作』改稿かしら、と考えています。すでにカクコンには後ろ向きになってしまう読者選考の壁。
疑問質問です。個人的に、同じ作品を何度も改稿して「新作」アップは顰蹙ものなのかな、という不安もあるのですが、どう思われますか?
厳密に言えば「新作」ではないですし。
ストレスかけないように、感謝を忘れずに、書いていこうと思います。
ユークレース、シレア、ともにお越しくださいましたら、心より歓待いたします!
『時の迷い路』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889868322
『楽園の果実』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894170460
本当、この前半書いている間に本編かけ・・・
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