スタートですよ!
抱え込んだ書類束をばらばらとめくり、王女は中から一枚を取り出した。その様子を眺めていた兄王子——いや、もう王といっても良い頃だろうか——は、昨年を思い出してふと呟く。
「昨年はおかしな書物が途中まで書いてあった状況で、文字が増え続けていたのだったな。今年はそうしたことは聞いていないが、なぜ遅れたんだ」
王女の傍でロスは早く該当書を出せと手を出していたが、主人の問いにカエルムの方へ顔を向ける。
「昨年は催しの初日から順次発表などという手筈を全く知らずの状態だったでしょう。今年は昨年に学んで……と行きたいところだったのですけれどね。結局以前からのものを発表することになったのは殿下も知っての通りです」
「だがここのところ、担当官が一度、公開を見合わせていたではないか?」
「別業務で進捗、遅延したらしいですよ。そっちの別業務が本業ですから。とはいえ、続きの作成中に作成済みのところも多大なる変更が要されたとか言ってます。だから全体の整合性と質のためにも、一度全て伏せた方が良いと」
「まぁ、出来上がっているところ一挙公開、っていう手もあったらしいのだけれど」
ようやく王女は該当書を発見したらしく、太文字で表題が書かれた一枚を兄の方へ見せる。美しい海の碧が階調になった刷りで、裏面には蔦模様と紅い果実。金箔があしらわれた豪華装飾だ。自国の会議資料ではおよそ使われない装丁に、ロスが口を挟んだ。
「誰だ……経費の無駄遣いは」
「相手国に送るものですもの。仕方ないでしょ。それでお兄様、悩んだのだけれどこちらはやはり、催し物の開催期に合わせて、再考したところから順に開示の方向性を取ると」
椅子から立ち上がったカエルムは、妹から書を受け取って検分した。確かにこれならば、他国へ送るとしても体裁として非礼はない、と思いたい。
「まあ、いいだろう。それではこれは、向こうとの往復書簡で完成させていくか。国は確か……」
「ユークレースよ」
***
体験記の更新が遅れました(え? 待ってない? そうおっしゃらずに)。
さてー、この『楽園の果実』はですね、当初、この間のカクコン終了後から連載していたのですよ。しかもそれも、元々あった話の改稿でした。
しかし今年はご存知の通りの状況です。私の仕事は倍加どころか何倍かってくらいに増え、休みはなく、土日もなく、いったい私、いつ休日あったんだっけ。おまけに年度後半から時勢に関わらずの業務激増でして。今でも執筆時間取れるのかって感じですが。これも予約投稿ですよ。
カクコン、去年はセオリーなんか知らずに連載中のカエルム殿下を参加させました。従って「新作」にはならないのに、もうみなさんがありがとうございます! おかげさまで現在、蜜柑桜の小節中トップのフォロワさん数(90ごえ! 100目指したい!)を誇っております。ありがとうございます。
「楽園の果実」は本業の激務ゆえに定期連載が難しく、一度おやすみしていました。しかしそうすると合間の時期でどんどん話を練りたくなってきて。
コンテストに参加させるなら、公開部分も練り込んだ後の改稿後を読んでいただいた方がいいですよね。コンテスト関係なくそうですけれど。
というわけで一度非公開にさせていただきました。読み進めていてくださった方には失礼なお話ですけれど、より良いものを、と思ってのことでお許しください。
そしてコンテストと同時に改稿部分全て開示しようと思いましたが、迷った末、他の方のご意見も聞いて、順に開示することにしました。
しかし、穴がある。
「新作」として通知されない。
フォロワーさんには通知がいかないわけですよ。
トップにも出ないわけですよ。
あははは、またこの戦略なんて練れない馬鹿さ加減がわかる公開っぷりです。
でもいいや、と思うことにしました。戦略なしに、ふらっと遊びに来てくれた方が純粋に面白いといってくださった方が、とても嬉しいですから。
と開き直っていたら、早速みなさまいらしてくださいまして、もうもうありがとうございます!
というわけで(?)、次回からこの体験記、『楽園の果実』の舞台、ユークレースのラピスにバトンタッチしたいと思います。
参加している短編(既存作)はまた別の機会にお話しするということで。
あ! シレア国シリーズ「王女編」は、改稿できたら改稿後にコンテスト参加、できなかったら現状のままコンテスト参加?! ちょっと未定な状況で、今は公開を伏せています。こちらも読み途中の方がありがたくもいらっしゃいましたら、お待ちくださいませ。
さて本日は、別の公募の発表日。落ちてるの確実なのに緊張しますね。連絡が来てない=落ちてる、なのですけれどね。無駄な悩みを……。
本編リンクはこちら。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894170460
今日公開部分は、第一稿にかなり加筆しました。
**
この後、こっちも参加しました。みなさんシレアへいらしてくださいませ!
カクコン5講評いただいた長編の元になった作品、『時の迷い路』です。https://kakuyomu.jp/works/1177354054889868322
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