第2話
『正直見当がつかないんだ。何か打開策はないか?』
街と国の
「雨か」
そういえば、傘持ってきただろうか。
『おい。聞いてんのか?』
「いや、今日傘持ってきたかなと思って」
『雨は気にすんなよ。お前が帰るときにはやむよ』
「じゃあ俺がなにもする必要ないじゃん」
『違うんだって。いま。この瞬間の軋轢を回避したいんだ』
しかたないので、いくつか考えて喋った。
『助かる。推移が変化したらまた連絡するからな』
「はいはい」
街の正義の味方と、国の覆面調査官。両方を兼ねている人間の数は、自分も分からなかった。正義の味方同士は横に強い繋がりがあるけど、覆面調査官は官邸とその場の仕事仲間以外に明かしていい仕事ではない。
「ふう」
学校の授業。なんでもない日常。この生活が、娯楽だった。
自分は、まだ学生で。大人にも子供にもなりきれない人間に混じって、存在しない青春を謳歌する。
青春という概念はマーケティング上必要だから打ち出されているだけで、実際そんなものは各人それぞれに存在する。一生が丸ごと青春な人間もいれば、死ぬまで青春が来ない人間もいる。そんな感性の多感さを、特定の年齢に押し込める方がおかしかった。
授業が始まる。
なんとなく、視線を感じた。
たぶん、彼女。
彼女は、絶賛思春期中だった。外も雨なので、今日は、別れでも切り出されるかもしれない。
後で、雨が晴れる時間を訊いておこうかな。別れを切り出したあとに虹でも見たら、すぐそっちに気が向くだろう。
彼女とは気が合うので、ずっと一緒にいたい。でも、思春期真っ最中の彼女にそんなこと言っても、1ミリも刺さらないだろうから。
今日もまた、彼女の青春を眺めて暮らす。
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