第5話 悪魔族と器
儀式の終了を見届けて私の仕事は終わった、そう思いたい反面で私は認識している。
中をプカプカと浮遊し人類を見下す巨悪、悪魔族。
今回は素体となった人間の意識が強く残ったのか呪いの濃度が例年と比べて格段に薄い。
そう思惑に耽っていた私の耳に、悪魔の声が届いた。
極薄い掠れた声、ソレへ反射的に目を向けた私と彼の目がちょうど交差する。
次の瞬間、悪魔は逃げようとして教会の壁に阻まれる。
教会の壁は対魔製の悪意を阻む結界で包まれている。
入るのは簡単でも出ることは、少なくとも下級の悪魔には出来ない。
「低レベルなんですか、、、? いや、それよりも、、、」
判断が早過ぎる、私の頭を過るのはそんな言葉だった。
そう、早いんだ。
通常の悪魔は初期の段階で危険の察知なんかできない。
そう、悪魔、、、
それは空間を歪め色を反射するほどにひたすら膨大な呪いなどの意識を持ち死んだ人間の成れの果て。
内在する自然の権化、精霊の存在を汚染する邪悪の化身。
悪魔は世界に溢れている。
とゆうか生物は死ぬ時悪魔か天使にしか変わらない。
幽霊なんて呼ばれるのは全部大なり小なりの悪感情を残した死人の残留意思、悪魔だ。
人生に一欠片の悪意があればソレは死後悪魔になり、生涯に一片の悔いも悪意もなく死んだ者の最終である天使になる。
故に天使は貴重であり、唯ひたすらに信仰され崇められる。
そうやって神が誕生する。
そして私は中でも強力に育ち肉体を生成するまでに成熟した天使、大天使だ。
私の仕事は悪魔の駆除。
「どうなさいましたかフリュエル殿?」
「いや、何でもないですよ」
「そうですか? フリュエル殿も弔われてください」
「そうですね、では失礼して」
私は言いながら灰の山に目を向けると歩を進める。
灰の少し手前で立ち止まると手を合わせ眼を瞑って祈りを捧げる。
『おい? ふざけんなよババア? 舐めてんのか?』
背後に気配を感じた瞬間、そんな声が聞こえた。
聞き覚えがある、2ヶ月も共に過ごしたのだから当然なのだけど、、、
「聖天領域、」
私は声を聞くとすぐに合わせていた手の平を離して指先だけをくっ付けたポーズに変え呟いた。
瞬間、世界が裏返る。
正確に言うと私を中心に光が広がって別空間と空間を接続した。
光が収まると私は悪魔と二人で雲の上の世界にいる。
晴天の空、青い雲の上で私は刀を取る。
どこにもなくとも現れた真っ白の刀。
「安らかに眠りなさいリック君」
『アハハ、嫌だね〜』
私の声に両腕の切断された悪魔は返して、ただ蹴り出した足を鋭く研ぎ澄ました。
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