第4話 束縛の解放、、、

 僕の体が寝かされ3時間ほどかな?


 部屋の窓から入る黄色い光に赤みが混ざって来た所で僕の中が空っぽになった。


 自分の事だしって全部見届けたけど自身の中を見るのは気持ちの良い体験じゃないかな。


 まあそんな事は良いとしてパンパンに燃えやすそうな棉みたいのを入れられた僕のナイフが刺さった左の胸と反対、右の刺し傷は内側で縫われ外側からは分かりずらいような縫い方をされていた。



「こんな感じですね、傷は塞がせてもらいましたし、、、 それじゃ運んでください」


「ぇ、ぁ、はい、、、」


「あ〜もう喋らなくて良いから立ち直ってくれよレイニュン! あ、運び出すんですよね、任せてください!」


「あ! アレって胃袋ですか? アッチは肺かな? あ! その袋に入ってるのって全部血ですか⁉︎」


「はい、そうですよ」


「たくっ! テンビルドルまで! 早く運ぶよ!」



 テンビルドルって奴がベットの少し離れた所に置かれた大量の汚い袋に興奮するのをギュートが宥める。


 少し前まで仕切ってたとは思えないような放心状態のレイベルトと変わらずキモいテンビルドルに言って僕の体を持ってみせるギュートが少しだけリーダーシップ?みたいなのを漂わせる。


 レイベルトって奴は立ち直りが遅いんだな、なんか印象と違う、、、



「ぁ、そうだな、、、」


「はいは〜い! だよ〜!」



 2人が言うと3人は僕を上げて部屋を出ていく。


 それについて行くと数分で到着したのは、、、


 何度も此処で焼かれるんだぞって見せられた大きな女神の石像が眺めるように見下す巨大な部屋、名前は祭殿だっけな?


 女神像の足元には豪華な彫刻のされた木製の棺桶、僕が入れられる所だな。


 棺桶の隣に立つ2人の男女には見覚えがある。


 右の男は僕が死ぬ原因にもなったアジュダラ教の教祖様だ、すれ違う度に額を地に擦り付けるよう教えられて何度も何度も額が削れる位に擦ったんだから忘れようにも忘れない。


 そして左の女は聖天使フリュエル様だ、紛れもない僕に死に方を教えた女、、、


 其れが理由じゃないけど僕が復讐するやつの1人だ、、、


 さて、話は戻り女神像の眼下、、、


 沢山並べられた木造りの椅子に座る幾多の人々、恐らくは首都内に住んでる人だろうと思うけど、、、


 なんて言ったら良いのか幽霊が言う事じゃないと思うけど全員が微動だにすらせずただ祈る姿は様になってて、漂う独特の静けさが気持ちいい。


 流石は1日一回朝日と共に祈りを捧げるだけはあるよな。


 堂に入ってる感じがする。


 と、少しだが感嘆していた僕を他所に棺桶へ僕を運んだ3人に引っ張られるみたいに真ん中くらいまで寄せられちゃう。


 其処から見えるのは棺桶に入れられる自分、、、


 違和感しかない光景、そんな僕の心と場の静けさを破ったのは教祖ガートだった。


 僕が棺桶に入り蓋が閉まるのを横目に確認すると教祖は、、、



「これより女神アジュダラへの献上を始める! 狂えど狂えぬ信仰を捧げなさい‼︎」



 教祖の言葉に場の空気が変わる。


 呼吸器を潰されているような息苦しさ、吐き気に目眩のような錯覚まで、、、


 幽霊が感じるとは思えない感覚とともに、棺桶が勝手に燃え盛る。


 そう、ちょうど火事場で煙の立ち込める一センチ先の床も見えない部屋で立っているような感じ、、、


 場の圧倒的に重い空気、しかしソレじゃない。


 もっと違う理由だって本能が訴える!



「パンッ! これにて儀式を終了させて頂く」



 棺桶が燃える事十数分、燃え尽きた燃えかすの隣で教祖が手を叩き言うと空気が一瞬で晴れる。


 と共に違和感が消えて、一つの確信が脳裏に浮かぶ。


 もう、死体に引っ張られたりしない。


 もう自由になったと、、、



『解放感だn、、、』



 僕が人には聞こえない声を発し人には見えない体で伸びをしながら何となく前を見ると、、、


 フリュエルと僕の目が、完全に交差したと感じた。


 強烈な寒気と死ぬ時に感じた死の気配、其れが、、、


 あの時を遥かに凌駕する濃度で僕を襲った。


 その瞬間から先、僕に記憶は無い。

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