第3話 狂気の沙汰、、、

 半分強制で自死体に引っ張られながら空を漂う事数十分、目線の先に元祖国アルビューノー王国首都ベルセルドルクを囲む石造りの壁、、、


 その壁唯一の門が見えて来た。


 生贄に選ばれて初めて村から遠出し壁を見た時は流石の僕と言えども驚いたもんだけど教会で二月も暮らせば慣れるものらしく二度目の門には怒りしか感じない。


 だって、、、



「輸送係の方ですね、証明を拝見しても?」


「はいは〜い、どうぞ!」



 僕が思惑を巡らせる内に門へ到着したらしく停車した車のガラスを数度コツコツ叩いてガラスを下げるよう指示する門番に操縦席からガラスを開けギュートって奴が頭を出した。


 門番の指示に従い差し出されたのは気味の悪い右の手を象ったネックレス。


 それを見て門番も首の、しかし少し違う黒に白い亀裂みたいな線の描かれた左手のネックレスを外して同じく外されたギュートのネックレスを受け取ると握手させるようにネックレスの平と平を合わせる。



「はい、5階級のギュートさんですね。 どうぞ、お通りください」


「どうもで〜す」



 ギュートって奴は言うとガラスを上げると車を走らせ首都の中に入っていった。






 再発進から十分少し、何百回と見てこの1ヶ月で見慣れてしまった巨大な純白で装飾の豊かな建造物に、、、


 教会に到着した。


 停車した車の右側、運転席からギュートって奴が、助手席と後部座席の左側からレイベルトとテンビルドルが降りる。


 そして運転席と助手席の締まった扉と反して開け放たれたままの後部座席に3人が入っていき、数秒で僕の遺体を持ち出してくる。


 ドアは開け放ったままに教会の入り口を潜る3人に引き寄せられるように、とゆうか今回は自発的に閉まった扉を通り抜けて中へ忍び込む。



「何号室だっけ? 5?」


「12号室だ、記憶力が低いのは汚点だぞギュート」


「そうだっけ?」


「そいえば部屋で何するんです? 私はてっきり直ぐに入れて焼くものだと〜」


「俺も専門外だが腹割いて内臓とか血とか抜くんじゃないか?」


「ふ〜ん、私もやってみたいな〜」


「ふんっ、だったら医学の道に進むんだな。 与太話は終わりだ、早く運ぶぞ」



 レイベルトの声に応じて3人は教会を迷いなく進み『Ⅻ』と掘られた扉を叩き返事を待たずにテンビルドルが足でドアノブを回し開いたドアを潜った。


 3人について部屋に入るとソコは腐乱臭と言うのか、独特の匂いと生物の体液と思われるシミが其処ら中にこびり付いた汚い光景が見える。


 部屋はソコソコ大きくて、大きな病院の4人くらいで使うような部屋位ある。


 其処に三つ置かれた黒くなった液体の染み込んだベットと其々の横に立ち何かしてる5人くらいの人間、、、



「お、生贄ですねご苦労様です! 彼はこちらのベットに横たえてください」


「は〜い、こんな感じでっ良いですか?」



 横に三つ、縦に並ぶベット。


 その真ん中に置かれた他より少し上乗せで汚く見えるベットに元僕が寝かされる。



「はい、じゃ邪魔になるんで隣の部屋で待っててください。 終わったら呼びに行き、、、 可笑しいですね、右胸にデカイ傷が見えるんですけど?」


「ああ、刺す位置を間違えてたんで俺が刺し直したんです」



 ベットに寝る僕を見て空気の変わった5人の1人が3人に平坦な声で聞く、とレイベルトが被っていたフードを礼儀に反するとでも言うように下すと名乗り出る。



「そうですか、まあコッチでバレないようにしときますけど、、、 でも上層部にバレた時は覚悟しといた方が良いと思いますよ、首が飛ぶだけじゃ済まないと思いますから」


「、、、ぇ?」



 言って顔を僕の体に下げた男の言葉にレイベルトは数拍置いて小さな声を漏らした。


 放心したように立ち尽くすレイベルトを白衣の5人が睨むと空気を読んでギュートがレイベルトとテンビルドルの腕を引き部屋を出て隣の『Ⅺ』と掘られた部屋に入っていった。

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