第2話 死んだ筈なんだが、、、

 あの日、右の胸に真っ赤なナイフの切先を突き立てた僕は確かに死んだ。


 激痛と強烈な熱、呼吸不全、、、


 何よりも僕は死を最も身近に感じていた。


 その感覚に偽りはない、確かな死を知ったんだ。


 だが、あの日から1週間、、、


 僕は死んだ瞬間から、もっと言うと意識を失っても死んでない瞬間からずっと僕は全て見ていた。


 俗に言う幽体離脱ってヤツだと思う。


 この状態を無理にでも形容するなら『生きていない、が死んでもいない』とゆう所だろうか?


 僕は確固たる意識を持って幽霊になってしまったのだ。


 科学もソコソコ進んだ時代に非科学的とも思う、だが僕は幽霊になった。


 飛べるし、物質を通り抜けるし、物を通して向こう側も見ようと思えば見えるし、念じれば念動力みたいに物を動かすこともできる。


 ただし穴を出ることは出来ない。


 いや、正確には穴で死んでる僕の体から目測10メートルくらい以上離れれないんだ。


 儀式の終了後、教会の奴等が僕の死体を回収しに来るのは穴に落としてから1週間だったと思う。


 つまり今日の何処かで教会の下っ端が僕を回収しに来る。


 って言うのも生贄ってゆうのは死んで終わりじゃない。


 死んでから数日の腐敗は始まっていないが異臭の仄かに香る遺体を神像の御前で木製の棺桶に収め棺桶ごと遺体を焼く、ここで使われた炎は国のシンボルとして国王が住む城の一階、数十メートルの豪華な集会場みたいな場所で1年燃やされ続けられるらしい。



『ガガガガガーーー、、、』



 僕が自分の死体を見下ろしながら思惑に耽っていると穴の上、空気を遮断するくらいに密閉する見るからに重そうな蓋が音を上げて持ち上がった。


 音を聞き上を見た僕の目には右にズレる蓋、そしてブカブカで無地の黒いローブを羽織り首に真っ白に黒い血管みたいな、亀裂みたいな線の描かれた右手の付けられたネックレスを下げる3人の男が写る。


 と言ってもフードに隠れて口周りと首以外は影になってて見えないから体格的にって事だけど。



「ひえ〜 ここ降りるんっすか〜? こえ〜」


「嘆いてねぇで早く降りろ、3時間で教会に運ばないと絞られるぞ?」


「そうっすよ〜 まあ? 私的には怒られるのも吝かじゃないってゆうか? なんですけどね? ンフフィフィフィ、、、」


「レイニュン脅かさないでくれよ〜、、、 まあでも怒られるの嫌だし、はぁぁぁ、、、」


「仕事中だ、レイベルト・ニュンゲルさんと呼べ」


「私は私は〜」


「はいはい、じゃあチャッチャと終わらせようねっと」


「っと。 そうだな、神聖な場所といえど気分の良い場ではない」


「そう? 私は1人の人生が終わった場所ってだけで興奮するけど?」



 3人はそんな話をしながら下ろした梯子を伝い僕の死体を踏まないように着地する。



「ありゃ? ナイフの位置間違っちゃってるね? どうするんレイニュン?」


「レイベルトと、、、 こんなの刺し直してやればいいだろ」



 リーダーらしき男、レイベルトが僕の右胸に刺さるナイフをズボっと抜いて左に突き立てる。


 こりゃ前例でもあったか?



「刺し直したりして大丈夫なの?」


「別に良いだろう、前にも有ったそうだが当時の担当は私じゃないから知らんのだ」


「あ、怒られそうなら刺し直したの私って言うからね?」


「勝手にしろ、よし。 ギュート、足を持て。 俺は頭、テンビルドルは胴を支えろ」


「はいはい了だよ」


「オッケ〜〜〜!」



確認を取るようにレイベルトが言うと気弱そうな雰囲気のギュート?と少し気色悪さの伝わるテンビルドル?が指示通りに僕を上げてテンビルドルって奴が右の手を空けポケットから透明なビー玉みたいのを取り出し僕の口に押し込んだ。


 と、次の瞬間僕の体は何故か重力の干渉を失ったように3人の手を離れ落ちる羽が巻き戻るようにゆっくり、ユラユラと上がっていった。


 それを追うように3人も梯子を上がっていく。


 と、僕の体が穴を出た辺りで霊体が無理矢理に体へ引き寄せられる。

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