ひきこもりの僕は、地球第2ステージに移住してみた。

第10話 創世主

時間は少し巻き戻るが。

夕食は土鍋でご飯を炊いて、海老のかき揚げ丼にしてみた。

材料は海老、乾燥野菜を戻したもの、マキマキ。

これに天ぷら粉を和えて、馴染んだら少し水を足して、少しの油で揚げ焼き状態にした。

食後にお皿洗いの手間はないので楽なのだが、油は洗浄ボタンで洗ってしまうと出した分だけ無くなってしまうので、多くは使えない。

土鍋ご飯の半分はかき揚げを乗せる前に取っておき、おにぎりにして氷化の魔法で冷凍したので、明日の朝食べるつもりだ。

土鍋入りのかき揚げ丼に麺つゆをかけ少し蒸らす。

食べる直前に刻み海苔を掛けた。

いただきまーす。

「うあぁー美味しいーーー！こっちの世界の食べ物って旨みが濃くて、食感は滑らかだったりシャキシャキだったり繊細で、美味しく食べる為に育っているとしか思えないかも」

僕は、香ばしさの漂うご飯を口いっぱい頬張り、興奮して声が出てしまった。

独り言を言う人は、孤独やストレスが多いという情報があるらしいのだが…僕は当てはまらないだろう。

悪魔のおにぎりとか言う、似た調理法の食べ物があったよね。天かすと麺つゆを混ぜたおにぎり。

土鍋で炊き上げたばかりのご飯と、揚げたてかき揚げで作った丼は、悪魔的中毒性を発していた。

2日目も当たり食材しか引いていない。

移住者に特権を与えてくれていたりするし、創世主という存在からの配慮なのだろうか。

海老は単品で多かったので素揚げバージョンもある。こちらは塩を振って食べた。止められない止まらないのフレーズの、あのスナックの味だ。

蟹も素揚げや、明日のお味噌汁の出汁にするとして、食べきれない分は魔法で冷凍だな。

量がマキマキほど大量に取れるわけではないので問題は無いのだが、海老蟹は出荷が不可能になっていた。職業で漁業を獲得すれば出来るのかも知れない。

最悪食べきれなければ川に戻すだけだけれど、魔法の組み合わせでフリーズドライも作れないものかな。

にしても、所持リストのおかげで調味料も揃っているから今の所料理もできるのだけれど、無くなった時の事も考えないとな…。

食後。1分で用意した巨大化鍋のお風呂に浸かりながら、今後の事を考え始める。

調味料をショップで販売してくれれば助かるのだけれど、流石に見当たらなかった。

塩や醤油までならともかく、麺つゆの流通となると工場とか蔵とかが必要になるだそうし、そうなるとこっちの世界観のイメージが崩れちゃうよね。

ショップの最終ページまで確認した所、最後の商品は書籍だった。

「あれ？この四方祇って人、なろうで僕が読んでいた小説の作家さんだよね…あと最近別のところでも聞いた記憶があるけど、何処でだっけ…？」

“創世記１“というタイトルの本で1200YENとなっている。

いつの間に出版したのだろうか…？意味深なタイトルなのでショップに採用されたのだろうか。

僕の暮らすこの地域には娯楽もなく、読者だった親近感で試しに購入してみる事にした。

濡らさないように読めるかなと思い本を取り出すと、ピンポンパンポーンと効果音が響いた。

『創世主クエストが発生しました』

効果音に何事かと思っていたら天の声の通知も入る。

そういえば僕のクエストのページは地域の人と交流するで止まったままだった。

本を購入する事で発生したというのは隠しイベントのような物なのだろう。

創世主クエストの内容は

・創世記1を最後まで読む

・創世記1の感想を送る

・創世記2を購入する（今夏発売予定）

の3個が表示されている。

半ば強制的に本を売ろうとしている…みたいな雰囲気を感じるが、クエスト達成後の報酬は豪華な様だ。

ドラゴン系の武器や防具で、所持しているだけで弱い魔物などは寄ってこないらしい。是非欲しい。

ちなみに創世記1を所持するだけで、MPとHPが500.000ずつ上限が上がるという大盤振る舞いだ。

何なんだろうこの本は…。

本を開くと、最初のページにこう書かれていた。

「魔法が存在し、魔物と人間が共存する第二地球。

そんな世界に降り立った俺の願いは次々と達成する事になる。

様々な存在との交流を行い、この世界の攻略を目指すのだ」

…さ、3行。

ありがちといえばありがちで、差し障りのない文章なのだが。

最近見たり、聞いたりした記憶が有る要素が点在している気がしてならない。

そういえば第2ステージの創世主はゲーム感覚で簡単に楽しく攻略できる世界を創生したと、第二地球に移動する前に天の声が言っていた記憶がある。

「もしかして四方祇さんが創世主！？だから創世記！？

この本を読めば第二地球の世界観や、創世主の意向が分かる！？」

そんなわけで、最後のページまで読んで、その日の就寝時間は１１時頃になってしまった。

布団の中で回想する。

最後まで読んだ感想としては、”小説家になれる”で書かれていた異世界転生小説をまとめたものだった。

だが僕が未読だった部分は、主人公の魂の救済措置としてチート能力をつけて転生させてくれた神達と、一旦地球に戻る部分からだった。

神達が、地球観光をしたかったらしくその案内役として付いて行った主人公。

ついでに、生前目標にしていたファンタジー大賞を投稿して、亡くなった自分の供養をしようと思い、神たちを案内しながらも暇な時間に小説を書き進める。

主人公が物語を描き終えたと思った瞬間に、主人公が生前の世界の謎を解いて、別次元の新世界が出現した。

主人公は創世主とされ新世界の管理を神に任された。

この部分の主人公は四方祇さんの投影という事かな？

四方祇さん自体は、新世界の管理という大変な事よりは、自分の本をたくさん読んで欲しいし、売りたいというタイプで、根っからの物書きらしい。

その為には地球での認知や、第二地球での営業が必要と考えて、小まめに自分の作品に繋がる情報を散りばめている様だ。

新世界の設定は自分の書いた小説の設定をそのまま使うという、なかなか自由な創世主さんだ。

文章内に営業計画が記されていたがあまり商売上手とは思えない。僕としては一巻は無料で配布し、クエストの設定で読ませて、二巻から購買に切り替えれば、今の様な出し方をするよりは売れる気がしたのだ。

小説を読んでわかるのは、“願いは達成される“というフレーズに関して。

僕が料理人の時に、フライパンが大きくなった現象などは、四方祇さんの設定があったので、こちらの世界で叶った物の様だった。

イメージが強いと現実化出来るようになっていて、行きすぎた部分が確認できたら、天の声さんが修正を行う感じになっているのだろう。

「ルールブックになる本が入手できてよかった〜。あと、読者でよかった〜」

魔法の炎を弱めて、昨日と同様のガラスドームベッドで、僕は就寝した。